
腰から殿部にかけて痛みの出る大学生がいらっしゃいました。ふだんは大学のクラブで卓球をされています。身体を前後に曲げていただくと前に曲がりにくく、また右のお尻に痛みが出ます。
卓球シューズに入れたインソールの親指の付け根に相当する部分が薄くなって破れかけていました。左右ともにえぐられていますが、右はすでに穴が空きかけています。かなり右の親指の付け根(母趾球部)に圧力がかかっているようです。
1.足の捻じれの観察
ベッドにうつぶせの姿勢になっていただき、足首から先をベッドの端から出していただきました。
この状態で足の捻じれを見ると、右も左も同じ捻じれ方をしています。
足の前半分の内側が上がっていて、かつ親指が他の指よりも下がっています。
下図は前半分の内側が上がっているだけですが、さらに親指が他の4指よりも下がっている状態です。
2.反りにくい親指
そして親指の付け根の関節が反りにくくなっています。
これがひどくなると痛みが出て強剛母趾といわれる状態になることもあります。
強剛母趾に関しては「親指が反らなくなり、蹴るときに痛みが出る強剛母趾の治し方」をご覧になってください。
この状態は左よりも右がひどいので、右の親指の付け根にかなりの圧力がかかっています。
インソールの右の親指の付け根の部分が左よりも薄くなっているのはこれが原因です。
親指を反らすと下の写真の状態以上には反りません。
正常な足の場合には、地面を蹴るときに親指の付け根の軸で蹴るのですが、
この方の場合は親指が反りにくいため、第2~5指の軸を使う傾向があるのです。
そのため歩くときに外股歩きになります。
また地面を蹴るときに第2~5指の軸を使うので、
靴の外側(小指側)にストレスがかかりやすくなっていて
この部分に穴が空いてしまっています。
卓球は陸上競技の長距離走や短距離走のような
おおよそ一方向にのみ動くスポーツとは違います。
右から左、左から右へと激しく方向転換するスポーツです。
さらにこの方は「カットマン」と呼ばれるタイプの選手のため、
前後の動きも多く、足の方向を変える割合が高いのです。
そのためこのタイプの足の持ち主の靴の外側には大きなストレスが絶えずかかることになります。
このことが靴の外側が破れることのひとつの大きな原因になっていると思われます。
以前にバスケットボールをやっている選手に同じようなシューズの破れがありました。
その方も強剛母趾の傾向がありました。
3.シューズの構造と足底板
またこの卓球のシューズの破れはシューズそのものの構造にも問題がありそうです。
通常、推奨されるのはシューズを前後から押したときに
指のつけ根に相当する部分で反る構造のものですが、
このシューズは靴の真ん中で反ります。
この構造の靴では足のアーチが保持されにくいので、足全体が内側に倒れやすくなります。
これは強剛母趾の傾向をますます強めます。
すると蹴るときの軸が一層第2~5指の軸に移動してしまうのです。
この方にはまずシューズの選び方をお伝えしました。
同じメーカーのものでも、もっと構造のしっかりしたものの方がいいのです。
現在この方が使っていらっしゃる卓球シューズでも十分に活躍できる足の構造の人もいらっしゃいますが、この方の足を支えるのには少し構造的に弱いのです。
そのアドバイスの上で足底板(矯正インソール、靴の中敷き)をお作りいたしました。
また卓球は左右の動きが激しいため、靴の中で足が滑らないように特殊な革をその上に貼りました。
4.腰痛と殿部痛が起こる理由
なおこの方は足が内側に倒れやすいため、スネもフトモモも内側に捻じれやすくなります。
すると骨盤が前に倒れやすくなるので、背骨は大きく反ることになります。
その結果、腰部の筋肉に大きな負担がかかることになります。
また前に倒れた骨盤を起こそうとするお尻の筋肉にも負担がかかります。
このようにして腰痛やお尻の痛みが起こっています。
日常履く靴にも足をコントロールする中敷きが、
ご自宅内では特殊なサンダルが必要である旨をお伝えしました。
今回は普段履き用の靴には既製品のインソールをお使いいただくことになりました。