
バスケットボールをやっている男子中学生がいらっしゃいました。
なかなかの強豪中学校のチームに所属しているらしく、練習もかなりきついようです。
現在、ヒザとカカトに痛みが出ています。
病院や整骨院に行ったものの、あまり症状に変化がないため当院にいらっしゃいました。
1.来院に至る経過
厳しい練習の中、3か月半前から右のヒザの下の出っ張った骨の辺りが痛み出し、
2か月前からはヒザの力が抜けて転倒しやすくなったそうです。
また8か月前から左のカカトが痛くなり、特に今回来院する1週間前から痛みが一層強くなりました。
今までとは痛みが違うため、整骨院を受診しましたところ、アキレス腱が切れる恐れがあると言われたそうです。
次に整形外科を訪れると、アキレス腱が切れることはないが、
カカトが引っ張られるので痛みが出ているのだという説明を受けました。
このような状況の中、お母さまがネットで当院を探し出して下さり、息子様とともに来院されたのです。
2.バスケットシューズが破れた理由
お持ちになったバスケットシューズは、 小指の付け根の部分が左右ともに破れています。

左右ともに小指の付け根の部分で破れたバスケットシューズ
この中学生は足の捻じれによって、カカトが内側に倒れやすくなっています。
これを過回内またはオーバープロネーションといいます。

足の変形が過回内(オーバープロネーション)を起こす。(Pod Mech vol.2. 株式会社インパクトトレーディング, 2006, p9)
そのために体重がかかったときに、親指の付け根にある2つの骨が 衝突しやすくなっています。
これを機能性強直母趾といいます。

親指の付け根で2つの骨が衝突する
そのため親指が反りにくくなるので、体重が外側に移動し、
親指の付け根の軸ではなく、第2~5指の付け根の軸で蹴ろうとします。
すると通常以上に靴の外側が反らされ、やがて小指の付け根の部分が破れてしまいます。

蹴るときはどちらかの軸を使う。
また第2~5指の付け根の軸で蹴る場合には、親指の付け根の軸で蹴る場合よりも効率が悪いため、
カカトを持ち上げるフクラハギの筋肉が、より使われるようになるため、
フクラハギの筋肉が使われすぎて筋筋膜性疼痛症候群を起こし、カカトに痛みを出すことがあります。
3.オスグッド・シュラッター病と筋筋膜性疼痛症候群
またカカトが内側に倒れるため、スネが内側に回転して(①)
ヒザが通常以上に内側に入ります(②、これをニーイン knee-in といいます)。

ヒザが内側に入るのは「ニーイン knee-in」と呼ばれる。
このとき、膝の動きにブレーキをかけるために
太ももの前面にある大腿四頭筋は通常以上に働かされます(③)。
さらに親指でしっかり蹴れないため、
地面を蹴るときにやはり大腿四頭筋は働かされ過ぎるのです。
するとこの筋肉の先端にある膝蓋靭帯がヒザの直下の骨の出っ張ったところを牽引して痛みを出します。
さらに症状が慢性化するとこの筋肉が筋筋膜性疼痛症候群を起こし、ヒザに痛みを引き起こします。
これが起こるとヒザの筋肉の働きが弱くなり、ヒザの力が抜けて「膝折れ」を起こしやすくなります。
整骨院や整形外科ではオスグッド・シュラッター病という病名を言われるでしょう。

大腿四頭筋の筋筋膜性疼痛症候群
当院では足底板を使って、カカトが内側に倒れ過ぎるのを防ぎました。
その後、カカトやヒザの痛みはなくなり、またバスケットシューズが破れることもなくなりました。
4.破れる足底版
しかし親指のつけ根での2つの骨の衝突のため、体重が親指をうまく通過できません。
そのため親指の付け根に大きな体重がかかるため、足底板は下のように穴が開いてしまっています。

穴の開いた足底板
そこで足底板の裏にパーツを貼りつけて、さらに捻じれの影響を少なくしました。

パーツを貼り付けて補正した足底板
まだか1か月しか経っていませんが、パーツを貼りつけたことによって
親指の付け根のタコがかなり薄くなっています。
半年後に足底板がどのようになっているかが楽しみです。