クラシックバレエを行なうと外反母趾になるというのは間違い

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バレエダンサーはつま先で立つという、バレエをしない人が行なわないような姿勢を取る。このつま先立ちのときに使っている足の指は母趾、第2趾、第3趾である。そのためこれらの指には大きなストレスがかかっていると思われるが、同時にこの立ち方が、バレエダンサーの外反母趾になる頻度を高め、またその外反母趾の程度を悪化させていると言われている。この説は本当であろうか。またバレエダンサーは外反母趾に対してはどのような対策を取ったらいいのであろうか。

1.バレエを行なうと外反母趾になるのか

1-1.調査方法

バレエと外反母趾に関する論文で、グーグル検索でまず見つかったのは「バレエダンサーにおける外反母趾。これは作り話か?」(注1)である。

この論文では、まずスウェーデン王立バレエに所属する現役の63名(男性21名、女性42名)のバレエダンサーと、引退した38名(男性14名、女性24名)のスカンジナビア人のバレエダンサーの外反母趾角が調べられている。

現役ダンサーの年齢は男性が16~43歳(平均29歳)で女性が16~42歳(平均25歳)、引退したダンサーは男性が44~78歳(平均57歳)で女性が44~79歳(平均58歳)であった。

そしてこの調査結果と、過去に行なわれたバレエを行なわない人々の外反母趾角の調査結果(ゴットシャルク博士たちの研究)を比較している。バレエを行なわない人々に関しては南アフリカの白人の16~20歳の男性25名、50歳以上の男性87名、16~20歳の女性25名、50歳以上の女性100名の外反母趾角の平均値が使われている。

また1950年代に行なわれたハーディ博士とクラファム博士の研究、すなわち15~68歳(平均22歳)の男女125名の調査結果とも比較している。

1-2.調査結果

1)バレエダンサーの調査結果

人数 年齢 外反母趾角
現役女性ダンサー 42人 16~42歳 19.1±5.9
引退女性ダンサー 24人 44~78歳 25.9±8.6
現役男性ダンサー 21人 16~43歳 16.8
引退男性ダンサー 14人 44~78歳 16.1

2)バレエをしない人々の調査結果(ゴットシャルク博士たちの研究)

人数 年齢 外反母趾角
女性 25人 16~20歳 17.9±4.9
女性 100人 50歳以上 26.9±10
男性 25人 16~20歳 18.3
男性 87人 50歳以上 21.2

3)バレエをしない人々の調査結果(ハーディ博士とクラファム博士の研究)

人数 年齢 外反母趾角
男女 125人 15~68歳

(平均22歳)

15.7±6.0

1-3.判明したこと

この研究から分かったことは

  1. 現役女性ダンサーの外反母趾角の値(19.1°)はバレエをしない場合の値(17.9°と15.7°)よりも少し高いが、これは現役女性ダンサーの年齢が高いために起こったことであり、この違いは無視できる。
  2. 引退女性ダンサーの外反母趾角の値(25.9°)はバレエをしない50歳以上の女性の値(26.9°)とほぼ同じ。
  3. 現役男性ダンサーの外反母趾角の値(16.8°)はバレエをしない場合の値(18.3°と15.7°)とほぼ同じで、かつ引退男性ダンサーの外反母趾角(16.1°)は現役よりも上がっていない。

以上のことから言えることは、男女ともにバレエによって外反母趾角が大きくなることはないということである。

(注1)Einarsdottir, H.; Troell, S; Wykman, A. Hallux Valgus in Ballet Dancers: A Myth? Foot Ankle International. 1995, vol. 16, issue 2, pp. 92-94.[フルテキスト

2.バレエダンサーの痛みの原因はなにか

続いて検索で「女性クラシックバレエダンサーにおける外反母趾について」(注2)というすばらしい論文が見つかった。ネット上では読めないが、国立国会図書館には所蔵されている。

これはまず63人の女性バレエダンサー(15~26歳)の足と、同数の看護学生(18~20歳)の足のレントゲン撮影を行ない、M1G1角、M1M2角、M1M5角を比較している。

M1G1角、M1M2角、M1M5角

M1G1角、M1M2角、M1M5角

小川正三、崎原宏、黒瀬純一(1986)「女性クラシックバレエダンサーにおける外反母趾について」,『足の外科研究会誌』 7, p. 16, 足の外科研究会

 

次に127人のバレエダンサーを3つのグループ、すなわちバレエ年少者群(7~14歳)、バレエ群(15~26歳)、バレエ年長者群(27~50歳)に分けて、バレエの経験年数によって母趾の外反角がどのように変化するかを確かめている。

この研究で分かったことは

  1.  M1G1角、M1M2角、M1M5角は看護学生よりもバレエダンサーの方が少し値が大きくなっている。しかしこの結果からダンサーの外反母趾傾向がバレエの影響であると断定するのは危険である。
  2.  バレエ年少者群、バレエ群、バレエ年長者群のM1G1角、M1M2角、M1M5角を比較すると、その値にバレエ経験の年数の影響は認められない
  3.  バレエダンサーの愁訴は母趾の外反がひどくなったからではなく、非生理的な荷重や運動を行った結果による痛みが主な原因であると考えられる。

(注2)小川正三、崎原宏、黒瀬純一(1986)「女性クラシックバレエダンサーにおける外反母趾について」,『足の外科研究会誌』 7, pp. 16-19, 足の外科研究会.

3.バレエダンサーの外反母趾の原因はなにか

上記の2つ論文から、クラシックバレエダンサーの外反母趾がバレエによるものではないことが分かる。
では何が原因かというと、バレエを行なわない他の外反母趾の人の原因と同じである。

詳しくは「あなたの信じている外反母趾の原因は全く根拠のないウソかも 」に「外反母趾の3大原因」として説明しているが、3つとは

  1. 遺伝
  2. 靴とくにハイヒール
  3. 女性

である。

靴にはバレエシューズやトウシューズも考慮されることが、バレエダンサーでは特殊である。
この3大原因の中でも遺伝の影響は非常に大きい。
遺伝の影響については「悲しいけれども遺伝は外反母趾の原因の中でも最大のものだ!」を読んでほしい。

4.バレエダンサーの外反母趾対策

バレエダンサーとは言っても、バレエを行なうとき以外はバレエをしない人と同じことに気をつけるだけでよい。バレエが外反母趾の原因ではないのであるから、ふだんの生活が非常に重要である。これまでバレエが外反母趾の原因であると思っていた人たちは、ふだんの生活にはまったく気をつけていなかったことであろう。こちらの方がはるかに重要なのであるのに。

4-1.靴選び

ウォーキングシューズの場合は「外反母趾の人生をバラ色にするシューズ選びの3つのホイント」に書いてあるから読んでほしい。子供の靴選びは改めて投稿する。

かんたんに言うと、ウォーキングシューズは1~3の3つ、パンプスの場合はもう一つの条件が付いて1~4の4つの条件を満たすことが必要である。

  1. ヒールカウンターがしっかりしている。ヒールカウンターとはカカトを被う部分のこと。
  2.  靴を捻じったときに90度以上捻じれないこと。
  3.  靴の反る位置が、足の指の反る位置に一致していること。
  4. ヒールの高さは3~5センチ。

バレエシューズやトウシューズは先が細すぎるものは避けること。

4-2.足底板

靴の中には足底板そくていばん、つまり医療用の中敷き(矯正インソール)を入れておくこと。外反母趾になるのは親から外反母趾になりやすい足の形を遺伝されたことが大きい。この足を補正して、外反母趾の方向に足の骨が動くのを抑制するのである。

足底板を作るときに大事なことは、体重をかけずに足型を採ってもらうことである。体重をかけてしまうと、足によってはつぶれてしまって、正確な足型が取れない場合がある。
これについては改めて詳しく書くことにする。

足底板の作製

体重をかけずに作る足底板

以上述べた靴と足底板の2つは絶対に必要である。これを使わずにテーピングやエクセサイズを行なっても改善はできにくいし、改善できたとしても再び元に戻ってしまう可能性が強い。

4-3.サンダル

このサンダルは家の中で履くためのもので、米国の足病医が考案したものである。

サンダル

足病医の開発したサンダル

畳の部屋では使いづらいが、フローリングでは快適である。
夏は素足で履き、冬は5本指ソックスを履いて使う。
外で使ってもいけないと言うことはないが、外出時にはできるだけ足底板を入れたウォーキングシューズが望ましい。

4-4.テーピングとエクセサイズ

親指を元のまっすぐな状態に戻してテーピングを貼り、またエクセサイズを毎日行う。
テーピングとエクセサイズに関しては、(バレエを行なわない)一般の外反母趾の人のための記事として投稿したのであるが、バレエダンサーはかなり足の親指にストレスがかかるので、別のテーピング法を改めて紹介したい。もちろんバレエをしないときは下記に記載のテーピングでも構わない。

もし外反母趾のテーピングを続けるのならばこの方法がベスト
痛みのある外反母趾に効果的なテーピングを行う超簡単な方法

以上、バレエダンサーの外反母趾について説明したが、この中でも特に足底板は重要である。これが外反母趾対策の成否にもっともかかわるのである。皆さんがよい足底板にめぐり会うことを祈っている。

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