裸足生活の人々に外反母趾が存在することを示した2つの論文

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裸足で生活していたら外反母趾にならないのでしょうか。実は裸足で生活している人々の中でも外反母趾は見られるのです。ここではニューギニアとセントヘレナ島での調査の結果を記した論文を挙げて説明してみます。

1.ニューギニアでの調査

全くはきものを履かずに、つまり裸足で生活した場合に外反母趾になる人はいるのでしょうか。 興味本位でネットを検索していると気になる論文があったので、国立国会図書館から取り寄せました。

これは残念ながらネット上では読めません。題名は「(生活様式が)新石器時代のニューギニアの住民における外反母趾の有病率」(注1)とでも訳しましょうか。

新石器時代というと今から何千年も前のことですが、決してその時代のニューギニアに住んでいた人々を調査したわけではないのです。この論文が書かれた1966年ごろのニューギニアの奥地には新石器時代のような生活をしている部族がいて、その部族の人々を対象にして外反母趾の調査が行われた訳です。靴はなく、みんな裸足です。有病率というのはどのくらいの人がその病気にかかっているかを表わす割合です。

この論文によるとテキン・バレー(Tekin valley)という地域に存在する村のうち、ドゥアンミン(Duanmin)村を除くすべての村に外反母趾の人がいたというのです。そして全年齢を調査すると男性665人のうちの7人(1パーセント)に、女性591人のうちの21人(4パーセント)に、少なくても左右どちらかの足に外反母趾が見られたということです。

また30歳以上で計算すると、男性の3.2パーセント、女性の8.3パーセントに見られたことになります。そしてその外反母趾の程度は男女ともに年齢が上がるほどひどくなり、女性の方が男性よりもひどいということです。

ニューギニアのテキン・バレーに存在する村に住む51歳の女性と彼女の13歳になる娘
(Maclennan R: Prevalence of hallux valgus in a Neolithic New Guinea population. Lancet i:1399, 1966)

この論文の中に「ニューギニアのセピク低地にあるマプリクの近くで、外反母趾を探したのだけれども非常にまれでした。これは遺伝的な違いのためなのかもしれません。なぜならば見たところでは摩擦や裂傷に関して、(両方の場所に)意味のある環境的な違いはないからです」と書かれています。

環境がほぼ同じなのに、一方の場所では外反母趾がよく見られ、他方の場所ではあまり見られないのは、遺伝的な要因の可能性があるということです。

本題とは関係ないですが、当時のニューギニアには外界との接触を断った、非常に危険な部族もいたといいます。そんな中でよくこのような調査を行なうことができたものだと感心します。

(注1) Maclennan R: Prevalence of hallux valgus in a Neolithic New Guinea population. Lancet i:1398, 1966.

 

2.セントヘレナ島での調査

もうひとつ論文を紹介いたしましょう。これはネット上でも読むことができます。「部分的に靴を履いている地域における外反母趾の発症率」(注2)と訳しておきましょう。これもすばらしい論文です。

この論文はセントヘレナ島での外反母趾の調査結果を記録したものです。3006人もの住民が協力しています。セントヘレナ島というと1815年にナポレオン1世(ナポレオン・ボナパルト)が島流しにあったので有名ですね。

論文の題にある「部分的に靴を履いている」というのはどういう意味かというと、靴を履いている人もいれば、裸足で生活している人もいるということです。また靴を履いている人の中にも若いころから履いている人もいるし、年を取ってから履き始めた人もいます。この靴というのは男女ともに一部の例外を除き、ほとんどが先のまるいフラットなものだったそうです。

調査の結果、裸足で生活する人のうち約2パーセントが外反母趾で、その男女差はなかったようです。また靴を60年間以上履いた人々のうち、男性では約16パーセント、女性では約48パーセントが外反母趾であったそうです。

現代の日本のように、みんな小さいころから靴を履いているのであれば、年齢別に調査をし、あとはどんな種類の靴を履いていたかを調べればよいですね。ここではみんな同じような靴を履いているから、その点では調査は簡単ですが、靴を履いて生活している人もいれば、裸足で生活している人もいる。しかも靴を履いている人も履き始めた年齢が違うので、そういう点では大変だったでしょうね。

この2つの論文から、はきもの以外にも外反母趾の原因があるということが分かります。もう少しはっきり言うと、その人の足そのものに外反母趾になる原因があるということです。そしてそれは遺伝も関与している可能性があるということです。

(注2) Shine I B: Incidence of Hallux Valgus in a Partially Shoe-wearing Community. Brit Med J7, 1965, 1, 1648-50.

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