外反母趾の人の歩行と正常な歩行とはいったいどこが違うのか

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外反母趾などの足のトラブルが起こる場合は、正常な場合と比べて歩行における足の動きがどのように違うのかということを説明してみようと思います。 が、正常な歩行というのがどのように行なわれているかが分からないと、その違いを理解することができません。 そこで初めに正常な歩行がどのようなものかを説明し、そのあとで外反母趾の歩行を説明したいと思います。
ただしまったく理想的な動きをする足を持つ人はきわめて少ないため、ここでは距骨下関節(きょこつかかんせつ)過回内(かかいない)が比較的少ない人の足を使って正常な歩行を説明いたします。

1.正常な歩行 (正常に近い歩行 )

1-1.カカトが地面に着く

正常歩行の後面1 正常歩行の前面1
  • 右下肢のカカトの外側から地面に着きます。このときカカトの底面の外側に地面から床反力ゆかはんりょく)が上方向に加わります。
  • 一方、カカトの底面の内側は下方向に降下()するため、結果的に距骨下関節きょこつかかんせつ回内かいない方向の力()が働きます。この距骨下関節の回内運動が足への衝撃を吸収する効果を持っているのです。
  • またこの回内運動が起こると下腿部が内側に曲がります(内旋ないせん)。
  • なお回内運動により踵骨しょうこつの上にある距骨きょこつが内側に倒れこんできます。

1-2.小指が地面に着く

正常歩行の後面2 正常歩行の前面2
  • 足関節を底屈させながら、足裏を地面に着けます(前脛骨筋ぜんけいこつきん伸張性収縮しんしゅくせいしゅうしゅくを行ないます)。
  • このとき膝関節と股関節にも屈曲方向への回転モーメントが働きますので、足部に底屈方向への回転モーメントが働いてもそれほど大きな底屈は起きません。
  • そして小指のつけ根が接地すると床反力()が生じます。
  • 親指のつけ根は下方向に降下()するため、前足部も後足部(カカト)と同様に回内運動()をします。

1-3.親指が地面に着く

正常歩行の後面3 正常歩行の前面3
  • やがて親指のつけ根が接地すると前足部は地面に固定されるのでそれ以上の回内運動はできなくなります。
  • 一方、後足部(カカト)は回内運動()を続けます。
  • 左足が地面を蹴ると骨盤が時計回り(右)に回旋し始めます。つまり骨盤は大きく左に捻じれた状態から中間位に向かって時計回り(右)に回り始めます。
  • また右大腿部と右下腿部も内旋位から中間位に向かって回り始めます。

1-4.反対の下肢が通り過ぎる

正常歩行の後面4 正常歩行の前面4
  • さらに左下肢が右下肢を追い越して、後方から前方に移動するのですが、この過程によって骨盤が中間位から右に回旋します。
  • それに引き続き、右大腿部と右下腿部が中間位から外旋位に向かって捻じれます()。

1-5.カカトが上がる

 正常歩行の後面5 正常歩行の前面5
  • この外側の捻じれ()が右足に伝わると、後足部(カカト)の回内運動()が止まって回外運動()に変わります。
  • 右足のカカトが上がるとさらに早く回外運動が行われるようになり、結果として踵骨しょうこつ立方骨りっぽうこつががっちりとロックされ、右足は硬く、「テコ」のようになり、身体をスムーズに前に進めることができるようになります。

2.外反母趾の歩行

次に外反母趾などの足のトラブルが起こる場合には、足は(正常とは違って)どのような動きをしているかを説明します。
もう少し具体的に言うと「距骨下関節の過回内」とはどのような運動であるのかということを説明します。
ただし足のトラブルは距骨下関節の過回内だけが原因ではありません。
回内とは逆の「回外」という動きが早期から始まってしまうことなど、その他の原因で起こるトラブルもあります。
これらは個々に改めて説明しようと思っています。

2-0.カカトが地面に着く直前

 過回内歩行後面0  過回内歩行前面0
  • 上では比較的、距骨下関節の過回内が少ない足の歩行のメカニズムを説明いたしましたが、ここでは前足部内反ぜんそくぶないはんの足の歩行のメカニズムを説明します。
  • 前項では着地の瞬間からの画像を載せましたが、ここでは着地の直前のこの画像から載せました。
  • 過回内を起こしているこの方の股関節は常に内旋位にありますので、着地時に左下腿が十分に外旋していません。
  • したがって正常な場合よりもカカトの中央に近い位置で着地します。

2-1.カカトが地面に着く

過回内歩行後面1  過回内歩行前面1
  • すでに回内を起こしている左足のカカトはほぼ水平に近い状態ですが、それでもやや外側から地面に着いています。
  • このときカカトの底面の外側に地面から床反力()が上方向に加わります。一方、カカトの底面の内側は下方向に降下()するため、結果的に距骨下関節に回内方向の力()が働きます。
  • そしてこの回内運動によって左下腿部がさらに内側に捻じれます(内旋)。

2-2.小指が地面に着く

過回内歩行後面2 過回内歩行前面2
足圧中心の軌跡の変化
  • 左足関節を底屈させながら、足裏を地面に着けます。
  • このとき左膝関節と左股関節にも屈曲方向への回転モーメントが働きますので、足部に底屈方向への回転モーメントが働いてもそれほど大きな底屈は起きません。
  • そして小指のつけ根が接地すると床反力()が生じます。
  • 親指のつけ根は下方向に降下()するため、前足部も後足部(カカト)と同様に回内運動()をします。
  • 後足部は通常以上に回内しているため、前足部は外反しています。
  • そしてCOP(Center of pressure、足圧中心)はインエッジ(親指側のエッジ)を抜けていると思われます(上左図、ただし右足で説明しています)。つまり体重はかなり内側にかかっていると思われるということです。
  • 上左図は距骨下関節の過回内がない場合のCOPの正常な変化です。

2-3.親指が地面に着く

 過回内歩行後面3  過回内歩行前面3
  • やがて親指のつけ根が接地すると前足部は地面に固定されるのでそれ以上の回内運動はできなくなります。
  • 一方、後足部(カカト)は回内運動()を続けます。距骨下関節が過回内を起こしているため、左下腿部も左大腿部も通常以上に内旋します。
  • したがって左膝はかなり内側に入ってきて(ニーイン、Knee-in)、あたかも下肢全体がX脚のように見えます。
  •  一方、右足が地面を蹴ると骨盤が反時計回り(左)に回旋し始めます。
  • つまり骨盤は右に捻じれた状態から中間位に向かって反時計回り(左)に回り始めます。
  • また左大腿部と左下腿部も過剰な内旋位から軽度内旋位に向かって回り始めます。

2-4.反対の下肢が通り過ぎる

過回内歩行後面4 過回内歩行前面4
  • さらに右下肢が左下肢を追い越して、後方から前方に移動するのですが、この過程によって骨盤が中間位から左に回旋します。
  • それに引き続き、左大腿部と左下腿部が軽度内旋位から軽度外旋位に向かって捻じれます(外旋)()。
  • 一方、後足部(カカト)は回内運動()を続けますので、下腿には内旋方向の力が働きますが、この内旋と外旋の逆方向の力が左下腿部にストレスを生じます。

2-5.カカトが上がる

 過回内歩行後面5  過回内歩行前面5
長腓骨筋腱と距骨下関節の関係

(Pod Mech vol.2. 株式会社インパクトトレーディング, 2006, p20)

  • 外側の捻じれ()が左足に伝わると、後足部(カカト)の回内運動()が止まって回外運動()に変わります。
  • しかし距骨下関節は正常のときのように完全な回外位になることはないため、踵骨しょうこつ立方骨りっぽうこつが十分にロックされることがありません。
  • したがって左足は「テコ」の働きをせず、身体をスムーズに前に進めることができません。
  • これがベタベタ歩きの原因です。筋肉が弱いからベタベタ歩きをするわけではありません。
  • また内側楔状骨ないそくけつじょうこつに働く長腓骨筋ちょうひこつきんの垂直方向に働く力(下図B,C)が、正常とは逆の上方を向く(下図A)ので、第1列(第1中足骨と内側楔状骨)を地面に固定できなくなり、COPがインエッジから第2~第3中足骨頭に移動します。この結果この部分にタコができます。
  • このとき第1中足骨は距骨下関節の過回内のために内転内反していますが、このことと第1列が地面に固定されないことによって、母趾内転筋が基節骨を外側にずらせます。
  • これが開張足、さらには外反母趾へと続いていくのです。決していずれかの筋肉が弱ることが開張足の根本原因であるわけではありません。

2-6.つま先が離れる

過回内歩行後面6  過回内歩行前面6
  • 左膝はかなり内側に入っている(ニーイン、Knee-in)ため、COPは第2~第3中足骨頭から母趾に移動します。
  • このとき母趾は第1中足骨に対して外反しているため、母趾の内側面に力がかかり、この部分にタコができている場合が多いようです。
  • また母趾の付け根にある中足趾節関節での背屈運動が阻害されるため、母趾が反らず、ますます母趾の内側面に力がかかっているのが分かります。
  • この背屈障害のため、左足は地面をまっすぐに蹴ることができなくなり、カカトはさらに内側を(つま先は外側を)向くようにツイストして地面を離れます。
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