あなたの信じている外反母趾の原因は全く根拠のないウソかも

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あなたは現在、外反母趾で困っているのでしょうか。おそらくなにがしかのことに困ってこのサイトに来て下さったのでしょう。

世の中には外反母趾に関してさまざまな情報が存在します。それらがすべて正しい情報であればよいのですが、残念ながら疑問符がつくような情報も少なくありません。

このブログではできるだけ客観的な情報を使って、外反母趾のことを書いてみたいと思います。とくに今回書いた「外反母趾の原因」は非常に重要です。もし誤った原因に基づいた施術や治療を行なえば、患者さんは費用面でも時間面でも精神面でも多大なロスを受けなければならないからです。

外反母趾を治すため、あるいは改善するには正しい原因を知らなければなりません。たとえばおなかが痛いとしましょう。それが胃潰瘍から来るものであるのに、もし単なる食べ過ぎだと誤診して治療したらどうなるでしょうか。実際には病院でそんなことが起こることはないでしょうが、原因を誤れば正しい施術や治療はできないのです。

だからもしあなたが外反母趾で悩んでいるのならば、外反母趾の原因をしっかりと認識していただき、正しい施術法・治療法・予防法を選択してほしいと思います。そうすればあなたはインターネット上でさまざまなサイトを見るたびに、何が正しくて何が間違っているのかを自分の力で判断することができるようになります。

そして正しい施術法・治療法が自然に選択でき、お金も時間も無駄にすることがなくなることと思われます。

1.整形外科学から見た外反母趾の原因

整形外科では「女性」、「ハイヒール」、「遺伝」を外反母趾の3大原因としています。個々の原因について深く見てみましょう。

1-1.女性であること -なぜ男性よりも女性に外反母趾が多いのか-

これまで男性よりも女性に外反母趾の人が多い理由には、女性の方が筋肉が弱いからであるとか、ホルモンの影響であるとか言われてきましたが、どうやら男女の骨の構造の違いによるというのが正しいようです。

これは「男女の足の骨の大きさと形の相違」(注1)という論文に書かれています。この論文には「女性の足は外転外反母趾変形になりやすいのか?」という副題がついています。「外転外反母趾変形」というのは外反母趾と考えたらいいです。

計測の結果、女性の足の第1中足骨は内側に移動しやすく、親指(母趾)は外側(小趾側)に移動しやすい可能性があることが分かりました。つまり女性の足は潜在的に外反母趾を形成しやすい構造を持っている可能性があるということです。

外反母趾における骨の動き

女性の足の骨は男性の足の骨よりも外反母趾になりやすい動きをする。

(注1)Ferrari, J.; Hopkinson, L.; Alf, D. Size and shape difference between male and female foot bones. Journal of the American Podiatric Medical Association. 2004, vol. 94, issue 5, pp. 434-452.

1-2.ハイヒール

整形外科学で言われている外反母趾の原因のふたつ目はハイヒールです。ハイヒールを履かない人でも外反母趾になっている場合がありますから、ハイヒールは外反母趾の原因ではないという意見もあるようです。

そこでまず、一般的にフラットな靴を履くと裸足の時よりも外反母趾になるリスクが高まることを、その根拠とともに示しておきました。ハイヒールを履かなくても、フラットな靴でも外反母趾になる人はいるのです。

そして次に男性がハイヒールを履き、女性がハイヒールを履かない場合には、男性の方に外反母趾の人が増えるということを示しました。同じ靴を履いた場合には外反母趾は圧倒的に女性に多いのですが、男性がハイヒールを履き、女性がフラットな靴であると、外反母趾は逆に(ハイヒールを履いた)男性に多くなります。つまりハイヒールは外反母趾の原因なのです。

1-2-1.(フラットな)靴が外反母趾の原因である根拠

ハイヒールの話の前にフラットな靴と外反母趾の関係についてお話しましょう。1965年に「部分的に靴を履いている地域における外反母趾の発生率」(注2)という興味深い論文が発表されています。これはナポレオンが島流しになったことで有名なセントヘレナ島での外反母趾に関する調査結果をまとめたものです。

当時のこの島には靴を履いて生活している人と、裸足のままで生活している人がいました。その中で1852人の男性と、1663人の女性を対象に調査がされたのです。次のグラフを見てください(男性は黒、女性は白の棒グラフ)。

外反母趾の割合

横軸は靴を履いた年数で、縦軸は外反母趾の人の割合
(Shine I B: Incidence of Hallux Valgus in a Partially Shoe-wearing Community. Brit Med J7, 1965, 1, 1649)

分かったことは、裸足で生活している人の中で約2パーセントが外反母趾になっていて、男女の差はあまりなかったということです。 男女の履物の条件が同じならば、女性の方に外反母趾が多いように思われますが、この調査では男女で違いはなかったようです。

一方、靴を履いて生活している人では、それを履き始めた時期が人によって違います。比較的若いころから履き始めた人もいれば、年を取ってから履き始めた人もいたことでしょう。とにかく現代の日本のように、みんながほぼ同じ年齢から靴を履き始めるような環境ではなかった訳です。ですから年齢別に外反母趾の調査をしても意味がなく、靴を履き始めてからの年数別に調査を行なっています。

ここで履かれている靴は一部の例外を除いて、男女ともに共通で、先の丸いフラットな靴だったとのことです。 男女ともに靴を履いた年数が長いほど、外反母趾になる人の割合が増えていて、とくに女性患者の増加の仕方が急激であることが次の表から分かります。

また靴を60年間以上履いた男性のうち、約16パーセントが外反母趾になり、60年間以上履いた女性のうち、約48パーセントが外反母趾になっているとのことです。

以上のことより、フラットな靴は外反母趾の原因となり、女性であるという条件よりも強い外反母趾の原因と言えると思います。

(注2) Shine I. B. Incidence of Hallux Valgus in a Partially Shoe-wearing Community. The British Medical Journal. 1965; vol. 1, no. 1648, pp. 1648-50.

1-2-2.ハイヒールが外反母趾の原因である根拠

男性がハイヒールを履くとどうなるのか。こんな調査は不可能かと思っていたら、実際に調査がされていました。 これは「歴史上のフランスの住民における外反母趾、605個の第1中足骨の古病理学的研究」(注3)という論文に書かれています。

この論文は南フランスにあるノートル・ダム・デュ・ブール教会の共同墓地に埋葬されている5~17世紀の遺骨の第1中足骨の調査結果を報告したものです。第1中足骨というのは足の親指の付け根にある骨です。

第1中足骨

第1中足骨

この墓地には11~13世紀の遺骨と16~17世紀の遺骨が比較的多いのですが、それらを比較すると11~13世紀の遺骨には男性と女性の外反母趾の頻度にあまり大きな違いがありません。ところが16~17世紀の遺骨では男性の外反母趾の頻度が女性のそれよりも著しく高かったのです。

16世紀末期から17世紀初頭にかけて、あらゆる社会経済階層で、馬車の使用や乗馬が増え、その結果、ヒールのブーツが男性のために開発されました。ヒールは馬に乗るときに、足があぶみから滑り落ちるのを防ぐことを目的としていたのです。

その初期のブーツは硬い皮で作られていて、しかも左右が同じ形で、男性の前足部に大きな制約を加えていました。さらにブーツはひとりで脱ぐのが難しかったため、男性はしばしば一日中それを履いていたのです。

一方、女性のヒール靴はどうかというと、初期のものは柔らかい皮や布で作られていました。このため男性の方にひじょうに外反母趾が多かったのです。

(注3) Mafart, B. Hallux valgus in a historical French population: paleopathological study of 605 first metatarsal bones. Joint Bone Spine. 2007, vol. 74, no. 2, pp. 166-170.

1-3.遺伝

整形外科学で言われている三つ目の外反母趾の原因は遺伝です。

1-3-1.裸足で生活をしても外反母趾になる人がいる

裸足で生活していれば、外反母趾にならないのかというとそうではありません。 1966年に「新石器時代の生活をしているニューギニアの住民における外反母趾の有病率」(注4)という論文が発表されました。

当時のニューギニアの奥地には何千年も前の新石器時代のような生活をしている人々がいました。その人々がどれだけの割合で外反母趾になっているかを調査したのです。 みんな裸足で生活していて、靴はまったくありません。有病率というのはどのくらいの割合でその病気にかかっているかを表わす数字です。

ニューギニアのテキン・バレーに存在する村に住む51歳の女性と彼女の13歳になる娘
(Maclennan R: Prevalence of hallux valgus in a Neolithic New Guinea population. Lancet i:1399, 1966)

これによるとテキン・バレーという地域に存在する村のうち、ドゥアンミン村を除くすべての村に外反母趾の人がいて、調査した男性665人のうちの7人(1パーセント)が、そして女性591人のうちの21人(4パーセント)が少なくても左右どちらかの足に外反母趾が見られたということです。

また30歳以上の調査では、男性の3.2パーセント、女性の8.3パーセントに見られ、男女ともに年齢が上がるほどひどくなり、女性の方が男性よりもひどいということです。

また環境がほとんど同じなのに、ある場所では外反母趾がよく見られ、他の場所ではほとんど外反母趾が見られないことがあり、この原因は遺伝的な要因の可能性があるということが書かれています。

(注4) Maclennan R. Prevalence of hallux valgus in a Neolithic New Guinea population. The Lancet. 1966, vol. 287, no. 7452, pp. 1398-1400.

1-3-2.双子の調査で分かった遺伝の影響力の大きさ

外反母趾にどれだけ遺伝が影響しているかを、双生児で調べた論文があります。「韓国人の外反母趾に対する遺伝的影響、健康な双生児の研究」(注5)という論文です。

双子

かわいい日本の双子

175組の一卵性双生児、31組の二卵性双生児、そして双生児の一等親に当たる家族853人が参加して外反母趾に対する遺伝の影響が調べられたのです。ここでいう「一等親の家族」というのは親子、兄弟・ 姉妹のように、自分と1/2の遺伝子を共有している家族を指し、日本での「一親等」とは違います。

研究に参加した人のうち、208人が外反母趾(外反母趾角が20度以上)に分類されましたが、調査の結果、分かったのは外反母趾変形を決定するのに遺伝因子が重要な役割を果たしているということです。またその一方で共有環境の影響は無視できるほどのものだったのです。共有環境とは家庭環境と考えたらいいです。

(注5) Chang-Hyung Lee; Sooji Lee; HyoJeong Kang; Da-Eun Jung; Yun-Mi Song; Kayoung Lee; Kyungtai Lee; JiHye Hwang; Joohon Sung. Genetic Influences on Hallux Valgus in Koreans: The Healthy Twin Study. Twin Research and Human Genetics. 2014, volume 17, Issue 2, pp. 121-126.

1-3-3.遺伝はハイヒールよりもはるかに大きい外反母趾の原因

遺伝とハイヒールがどれだけ外反母趾に関係しているかを調べた論文があります。 「ハイヒールを履くことは外反母趾の原因になるのか。1056人の中国人女性の調査」(注6)という論文です。

2008年の6月から8月にかけて、18歳から65歳までの1056人の中国人女性を対象にして外反母趾の調査が香港(ホンコン)で行われました。その結果、36.5パーセントの女性が外反母趾を持っていて、軽度の外反母趾が29.5パーセント、中程度の外反母趾が4.8パーセント、そして重度の外反母趾が2.2パーセントでした。

そして外反母趾を持つ女性のうちの88.8パーセントが家族に外反母趾の人がいました。その中で日常的にハイヒールを履く人が15.6パーセント、履かない人が73.2パーセントだったのです。また外反母趾を持つ女性のうち、11.2パーセントが家族に外反母趾の人がいなくて、日常的にハイヒールを履く人が2.8パーセント、履かない人が8.4パーセントだということです。 表にしてみましょう。

外反母趾と遺伝及びハイヒールの関係

外反母趾と遺伝及びハイヒールの関係

  1. 家族に外反母趾の人がいて、かつハイヒールを日常的には履かないで外反母趾になっている女性が外反母趾を持つ女性全体の73.2パーセント。
  2. 家族に外反母趾の人がいなくて、ハイヒールを日常的に履いていて外反母趾になっている女性が全体の2.8パーセント。

1)は外反母趾の原因が遺伝という要因によると考えられる場合で、2)はハイヒールという要因によると考えられる場合です。計算すると73.2÷2.8≒26になります。
つまり外反母趾の原因として遺伝はハイヒールの約26倍も強いということになります。

(注6) Daniel Wu; Lobo Louie. Does Wearing High-heeled Shoe Cause Hallux Valgus? A Survey of 1,056 Chinese Females. The Foot and Ankle Online Journal. 2010, vol. 3, no. 5, 3, doi: 10.3827/faoj.2010.0305.0003

2.足病学から見た外反母趾の原因

アメリカ、カナダ、イギリス、オーストラリア、ニュージーランドなどには足の病気を専門に扱う「足病学(ポダイアトリー、podiatry)」と呼ばれる学問があり、足の研究が進んでいます。そしてこの学問を学んだ多くの足病医(ポダイアトリスト、Podiatrist)が活躍しています。アメリカには足病医が1万数千人がいると言われています。この学問では外反母趾の原因は「過回内かかいない」という足の異常な動きにあるとされています。

2-1.外反母趾を引き起こす過回内(オーバープロネーション)とは

ひとりひとりの顔が違うように、足の形もみんな違います。足病学ではその足の骨格をいくつかに分類しています。その中で代表的なものを2つ挙げてみました。

前足部内反と前足部外反

足のねじれの例
足の前半分の内側が上がっている足(左)と外側が上がっている足(右)
(Pod Mech vol.2. 株式会社インパクトトレーディング, 2006, p8, 11)

左側の足は前の部分の内側が少し上がっていますし、右側の足は外側が少し上がっています。どうやってこの違いを見るかというと、下の写真のように足を観察するのです。

足のねじれの見方

こうやって足の変形(ねじれ・ゆがみ)を見ます。

この足の前の部分の上がり方で、歩いたときの足の骨格の動きが変ってくるのです。左の図の足が地面に着くときには下図のようにカカトが内側に倒れます。これを過回内(オーバープロネーション)というのです。

過回内

足の変形が過回内(オーバープロネーション)を起こす。(Pod Mech vol.2. 株式会社インパクトトレーディング, 2006, p9)

過回内が起きるとどうなるのでしょうか。この動きは足先にも伝わりますし、足首から上に膝や股関節や背中にも伝わります。足先に伝わった場合を見てみましょう。

過回内と骨の異常な動き

過回内カカトが倒れるとその動きは足先の方に伝わる。

4色の矢印で骨の動く方向を示しています。正常な足でもこの矢印の方向に骨は動きのですが、過回内を起こした足はこれらの動きが大きくなるのです。この動きを違った方向から見てみましょう。

外反母趾発生時の骨の動き1

外反母趾発生時の骨の動き1

第1中足骨は青の矢印(⑥)の方向に大きく動かされます。この動きは前脛骨筋ぜんけいこつきんという名前の筋肉によるのですが、この骨が動かされても親指の骨(基節骨)は地面に固定されています。すると2つの骨の間で亜脱臼が起こるのです。これが外反母趾の始まりです。

別のタイプの足も似たようなメカニズムで外反母趾に進んでいきます。

2-2.整形外科学から見た外反母趾の原因との関係

整形外科学では外反母趾の3大原因として、「女性」、「ハイヒール」そして「遺伝」を挙げています。この中でも遺伝の影響は非常に大きいことは上で述べた通りです。

しかし生まれつきの外反母趾というのは極めてまれで、ほとんどの外反母趾は成長とともに発現します。ということは直接外反母趾が遺伝するのではなく、外反母趾になるような足の構造が遺伝するのだと考えられます。

では外反母趾になりやすい足の構造とはどういうものなのでしょうか。それこそが足病学でいうところの、過回内(オーバープロネーション)を起こす足と考えて良いと思います。過回内を起こしやすい足の構造が親から子供へ、子供から孫へと伝わっていくのでしょう。

3.医学的根拠がはっきりしないもの

以上述べた外反母趾の原因以外にも、巷では外反母趾の原因であると言われていることがあります。ひとつは筋肉の弱りであり、もうひとつは悪い歩き方です。これらは外反母趾の原因でしょうか。

3-1.筋肉の弱り

筋肉が弱ってしまうから、外反母趾になってしまうのでしょうか。しかし考えてみると、陸上競技やサッカーなどの選手にも外反母趾の人はたくさんいます。足を激しく使うことによって足の筋肉は鍛えられているはずなのに、外反母趾になってしまっているのです。

3-1-1.まっすぐに立っている時にアーチを支えているものは何か

足には内側たてアーチ、外側たてアーチ、横アーチの3つのアーチ(足弓)があります。この3つのうち、外反母趾のある足は横アーチが低下しているのは知られていますが、どういう原因で横アーチが低下したのでしょうか。

それを述べる前にこれらの3つのアーチを作っているものは何なのでしょうか。それは
1)骨 2)靭帯(じんたい) 3)筋肉
の3つが考えられます。骨だけではアーチはできません。骨同士を結び付けるものがなければ、バラバラになってしまいます。この骨同士を結び付けているのが「靭帯」と呼ばれる硬いスジです。

では筋肉はどうでしょうか。まずこの筋肉を2つに分類したいと思います。
1つは筋肉の始まりも終わりも足部にある筋肉で、内在筋ないざいきんと呼ばれています。足部というのは「足首から先」のことをいいます。 もう1つは大腿部(ふともも)や下腿部(すね)の骨から始まって足部に終わる筋肉で、外在筋がいざいきんと呼ばれています。

内在筋と外在筋

内在筋(左)は始まりも終わりも足の中にあり、外在筋(右)は始まりは足の外、終わりは足の中にある。足とは足首から先のこと。

まず初めに内在筋が足のアーチにどのように関わっているかを見てみましょう。これに関する適当な論文がありました。題名は「足の内在筋の位相性活動いそうせいかつどう」(注7)です。

この論文では6つの内在筋の活動を筋電図で測定した結果を記録しています。平坦なところを歩いているとき、傾斜が10度の坂を上り下りしているとき、階段を昇降しているとき、つま先立ちをしているとき、そしてじっと立っているときの筋肉の状態を測定しているのです。

この測定から分かったことは、じっと立っているときに内在筋は働いていないということです。つまりじっと立っているときに筋肉は足のアーチを支えていないのです。ということは骨と靭帯だけがアーチを支えていることになります。

この硬い靭帯が伸ばされて開張足さらには外反母趾に進むのですが、たんに筋肉が弱ったぐらいではそんな変化は起きません。

では外在筋はどうなのでしょうか。「足弓支持そっきゅうしじにおける筋肉の役割」(注8)という論文を見てみましょう。

これは、20人の男性を椅子に座らせ、直角に曲げた右ひざの上に45キロ、90キロ、180キロの重りを載せたときに、6つの筋肉が働いているかどうかを観察した結果を論文にしたものです。6つの筋肉とは、4つの外在筋と2つの内在筋です。

重りを載せるときに、足部を水平にした状態、足部を水平位よりも20度上げた状態、足部を水平位よりも20度下げた状態、足の裏を20度だけ内側に向けた状態、足の裏を20度だけ外側に向けた状態にしておき、それぞれの状態での筋肉の働き具合を測定します。

その結果、片足に45キロあるいは90キロの重りを載せたとき、アーチを支える骨と靭帯は筋肉が働かなくても、容易にそれらの重さに耐えることができたのです。そして180キロの重りを載せたときに筋肉は働くようになりますが、そのときでも多くの筋肉は不活発なままだったのです。

これらの実験から第一線でアーチを作っているのは骨と靭帯だと言うことが分かります。そして歩行中のカカトが上がってからつま先が離れるまでのように足部にたいへん大きな重さがかかるときには、靭帯がアーチを守るのに加えて、筋肉が反射的に働いてアーチを守るのに加わるのです。

この実験結果から、筋肉が弱っただけではアーチは崩れないので、それだけでは外反母趾にはならないということが考えられます。外反母趾になるためには靭帯が緩むことが必要なのです。

(注7) Mann R.; Inman V. T. Phasic activity of intrinsic muscles of the foot. The Journal of Bone & Joint Surgery. 1964, vol. 46, no. 3, pp. 469-481.
(注8) Basmajian J. V.; Stecko G. The role of muscles in arch support of the foot. The Journal of Bone & Joint Surgery. 1963, vol. 45A, no. 6, pp. 1184-1190.

3-1-2.ハンセン病の外反母趾

足の筋肉が弱ると外反母趾になるのでしょうか。また足の筋肉を鍛えると外反母趾が改善するのでしょうか。 外反母趾と筋肉に関する論文を検索すると、「らい患者と外反母趾(第1報)」(注9)が見つかりました。

「らい」というのはらい病つまりハンセン(氏)病のことで、この論文ではハンセン病の足の写真を調査した結果を報告しています。調査の対象となったのは1910年(明治43年)から1951年(昭和26年)に撮影された、写真乾板に残されている54例96足の写真です。

分かったのは外反母趾と指摘できるものは6例7足であり、これからさらに足穿孔症などに続発した第1中足骨骨頭の破壊によると思われるものを除くと、わずかに2例3足にしか過ぎないということです。しかもこれらの外反母趾は軽度かやや中等度のものであり治療の対象とはならないレベルのものであったのです。

ハンセン病になると神経障害が起こることがあり、足の裏に傷があった場合にはそのまま放置され、感染によって潰瘍が形成されます。これを足穿孔症(皮膚穿孔症)といいますが、この穿孔によって第1中足骨の骨頭が破壊され、外反母趾を発症することがあるのですが、このようなケースを除くと、外反母趾は治療対象外の2例3足しかなかったということです。

運動神経麻痺で筋肉が萎縮するので、筋肉は弱ります。もし筋肉が弱ることが外反母趾の原因となるのであれば、96足中の3足つまり3パーセントなどという低いレベルであるはずがありません。

この論文では次のように書かれています。
「倉松によると、らい患者に合併する外反母趾の発症には、ライ性運動麻痺の関与がもあるとしているが、現在よりも麻痺が多発しかつ重度であったはずの往時に、外反母趾はむしろ稀であったと予測されるから、履物などの外因性要素のほうが第一義的な印象を受ける」

筋肉を使わないために、筋肉が弱って外反母趾になると言うのは疑わしいです。

(注9)戸沢為重, 倉松由子, 中田純, 成田稔. らい患者と外反母趾(第1報). 日本ハンセン病学会雑誌. 1995, vol. 64, no. 2, pp. 105-111.

3-2.悪い歩き方

悪い歩き方が外反母趾の原因であるという考え方があります。しかし整形外科学では後天的な外反母趾の原因は履き物(靴)以外には見つかっていないとされています。

むしろ悪い歩き方というのは外反母趾の原因というよりも外反母趾の結果、もう少し正確に言うと、足病学で外反母趾の原因とされている過回内(オーバープロネーション)の結果であると言った方が正確ではないかと思います。

足の捻じれ・ゆがみによってカカトが大きく倒れることにより外反母趾が発生します。倒れ過ぎたカカトは、足が地面を蹴るときにまっすぐな状態に戻りません。すると柔らかい足の状態で蹴るので、効率よく蹴れないため、ペタペタ歩くことになってしまうのです。これは改めて「外反母趾の人が正しい歩き方ができない唯一の理由とは何か?」で詳しく述べたいと思います。

4.外反母趾の原因のまとめ

  1. 整形外科学では「女性であること」、「ハイヒール」、「遺伝」が外反母趾の3大原因とされている。
  2. 「女性であること」よりも「ハイヒール」の方が、さらに「ハイヒール」よりも「遺伝」の方が原因としては大きいと思われる。
  3. 外反母趾が直接親から子供に遺伝するのではなく、外反母趾になりやすい足の形状が遺伝する。
  4. 足病学では足の特徴的形状(変形)によって引き起こされる過回内(オーバープロネーション)が外反母趾の原因であるとされている。
  5. 筋肉が弱るから外反母趾になるとは考えづらい。また筋肉を鍛えることは、大人に関してはあまり有効な対策ではないと思われる。
  6. 整形外科学では後天的に外反母趾の原因となるのは履き物(靴)以外には見つかっていないとされる。したがって歩き方は外反母趾の原因とはされていない。
  7. 「悪い歩き方」というのは外反母趾(を引き起こす過回内)の結果であり、外反母趾の原因とは考えづらい。したがって歩き方を変ようとすることはあまり有効な外反母趾対策とは言えない。
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治療家も真っ青!超短期間で痛みを1/10にする方法

この記事は 2で読めます。

足や膝や腰のトラブルに関しては

さまざまな施術方法が存在します。

 

しかし欧米で研究が進んでいる「足病学」の理論に基づいた施術方法は

まだ一般的には知られていません。

 

私たちの身体の構造は多くは遺伝によって

両親から引き継いでいます。

足の構造も両親のどちらかから引き継いでいるのです。

 

足に異常な構造があると、それは足の異常な動きを生みだし、

さらにスネ、膝、フトモモ、骨盤、背骨に異常な動きを発生します。

 

その異常な動きは

シンスプリント、変形性膝関節症、変形性股関節症、坐骨神経痛、

腰椎椎間板ヘルニア、腰椎分離症、腰椎すべり症、腰痛、

頸の痛み、猫背、ストレートネックなど

さまざまなトラブルを引き起こすのです。

 

これらの疾患から来た痛みを改善するのには

まずは足の異常な構造を足底板(そくていばん)によって補正し、

足の正しい動きを作ってやらなければなりません。

 

そして身体の動きを正常に近づけた上で、

痛みを出している部分(ほとんどは筋肉です)の施術を行います。

 

欧米では足底板はごく一般的に使用されていますが、

日本ではあまり一般には知られていません。

 

あなたも足病学に基づく施術を受け、

一日も早く、身体のトラブルを改善させてください。


一日も早く身体の痛みを解消したい方はこちらへ

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