足病学で説明されている、外反母趾発生の真のメカニズムとは

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生れたときに外反母趾になっている人はほとんどいません。その生れた時のきれいな足がどのように外反母趾になっていくのでしょうか。ここではその外反母趾の発生メカニズムを書いてみたいと思います。

この外反母趾の発生メカニズムほど日本の施術家と米国の足病医(足専門の医師)の間で言うことが違っていることはありません。ここでは足病医が説明しているメカニズムについて書いてみました。

1.詳しい説明の前に

1-1.外反母趾と遺伝

まず考えておかなければならないことは、生まれつき外反母趾の人は極めてまれだということです。
そして外反母趾は非常に遺伝と関係していることが分かっています。

ということは、生まれた時に将来外反母趾になるような条件を備えていることになります。
詳しくは「悲しいけれども遺伝は外反母趾の原因の中でも最大のものだ!」をお読みください。

その条件とは一体何かというと、足の骨格の特徴であろうと思われます。
言うまでもなく、われわれは祖父母や父母から遺伝という形で、からだの骨格の特徴を受け継ぎます。
足の骨格も例外ではないため、両親やそのまた両親の足の形と似ている訳です。

では足の骨格のどのような特徴が、将来外反母趾となる特徴なのでしょうか。
それは後で詳細が出てきますが、様々な捻じれ・ゆがみを伴った足の変形なのです。

祖父母や父母が外反母趾

⇒ 捻じれ・ゆがみを伴った足の変形が遺伝する。

⇒ 将来、外反母趾になる。

1-2.足病学における外反母趾の原因

欧米(アメリカ、イギリス、オーストラリア、ニュージーランドなど)では足の研究が進んでいて、
足病学そくびょうがく」という学問があります。

この足病学では「距骨下関節きょこつかかんせつ過回内かかいない」が外反母趾の原因だとされています。
いったい、「距骨下関節きょこつかかんせつ過回内かかいない」とは何なのか、そしてどのように外反母趾は形成されるのでしょうか。

まず「距骨下関節きょこつかかんせつ」という名前の関節がどこにあるかというと足首にあります。
これは「距骨きょこつ」と「踵骨しょうこつ」という2つの骨で構成されており、
よく知られた「足関節」のすぐ下に位置します。
下図のイエローの骨(距骨きょこつ)とグリーンの骨(踵骨しょうこつ)との間にあるのが距骨下関節きょこつかかんせつです。

距骨下関節

この距骨下関節きょこつかかんせつが「過回内かかいない」するのというのです。「過回内かかいない」というのは何なのでしょうか。
読んで字のごとく「回内し過ぎる」ということなのですが、それでは「回内かいない」とは何か。難しいですね。

それは「内側に回る」ということです。
何が内側に回るのかというと、距骨下関節きょこつかかんせつを構成している骨のひとつである「距骨きょこつ」です。

その距骨きょこつという骨がその下にある踵骨しょうこつに対して内側に回るのが「回内かいない」で、正常な足の人でも起こります。
これが回り過ぎるのが「過回内かかいない」ということなのです。

 

回内

回内(プロネーション)
SUPERfeet Training Program Tech 2. 株式会社インパクトトレーディング, 2004, p6 (左、一部改変)、同 Tech 3. 株式会社インパクトトレーディング, 2004, p11 (右、一部改変)

距骨下関節きょこつかかんせつの「回内かいない」は人間の歩行にとって重要な役割をしています。
それはかかとが地面に着いたときの地面からの衝撃を吸収することです。
もしこの回内かいないという動きがなければ、下肢に大きなダメージを与えます。
このダメージを小さくするために回内かいないは大きな働きをしているのです。

ところがものには程度というものがあり、この動きが大きすぎると色々厄介なことが起こります。
それは外反母趾、内反小趾、足底腱膜炎そくていけんまくえんなどの足部の疾患だけではなく、
ひざや腰のさまざまなトラブルの元になるのです。

そこで過回内かかいないがどういうものなのか、そして外反母趾はどのように起こるのかを説明する前に、
正常な「回内かいない」と骨の動きについて書きたいと思います。

距骨下関節きょこつかかんせつ回内かいない   ⇒ 正常な動き

距骨下関節きょこつかかんせつ過回内かかいない  ⇒ 異常な動き ⇒ 外反母趾、足底腱膜炎そくていけんまくえんなどのトラブル

 

2.回内と骨の動き

2-1.着地するときの正常な動き

回内かいないというのは正常な動きです。
正常な歩行の場合、着地したときに距骨下関節きょこつかかんせつ回内かいないという運動をして適度に回内位かいないい回内かいないした状態)なります。
そして母指の付け根が地面に着いたときに、第1列(第1中足骨ちゅうそっこつ内側楔状骨ないそくけつじょうこつ)は3つの方向に動かされます。
詳しく言うと

  • .床からの反発力により先端は上方に押し上げられ(実際には移動しません)、体重によって後端は下方に下げられる。
  • .床側の面が内側を向く。
  • .第2中足骨ちゅうそっこつから離れる方向(内側)に動く。
回内運動と足の骨の動き

回内運動と足の骨の動き

※第1中足骨ちゅうそっこつ内側楔状骨ないそくけつじょうこつ靭帯じんたいというスジで硬く結合しているため、1つのユニットとして扱われ「第1列だいいちれつ」と呼ばれます。

※これらの動きは基本的には前脛骨筋ぜんけいこつきんというスネの前面にある筋肉の働きによるものです。足の裏が地面に着くときに、いきなりバタンと着くのを防ぐのがこの筋肉です。この筋肉はそれ自身がゆっくり伸ばされながら、足の裏がゆっくりと地面に接するようにコントロールします。

前脛骨筋

前脛骨筋

2-2.蹴り出すときの正常な動き

つぎに正常な蹴りだしのときには、距骨下関節きょこつかかんせつは逆に回外かいがいという運動を始めます。
着地のときと逆の動きをするのです。

つまり回内位かいないいから中間位ちゅうかんい、さらに回外位かいがいいになり、踵骨しょうこつ立方骨りっぽうこつがしっかりとロックされます
この2つの骨がしっかりとかみ合う状態になります。

回外運動とロック

回外運動とロック

そしてふくらはぎにある腓腹筋ひふくきんが「かかと」を持ちあげて地面を蹴るのですが、
足部に働いた腓腹筋ひふくきんの力を前足部に効率よく伝えるためには、
この2つの骨がしっかりとロックされなければなりません。
このロックがないとベタベタ歩きになるのです。

下腿三頭筋

下腿三頭筋(腓腹筋とヒラメ筋)

 

回外

回外(スピネーション)
SUPERfeet Training Program Tech 2. 株式会社インパクトトレーディング, 2004, p6 (左、一部改変)、同 Tech 3. 株式会社インパクトトレーディング, 2004, p11 (右、一部改変)

世間では足の裏の筋肉で地面を蹴るように思われていますが、これは少し違います。
実際には足の裏にある短い筋肉で足をしっかり地面に固定し、
すねやふくらはぎに始まる長い筋肉で足を硬い状態(回外位かいがいい)にし、
そして腓腹筋ひふくきんでかかとを持ちあげて蹴るというイメージなのです。

3.過回内と外反母趾

3-1.着地するときの異常な動き

次に足の異常な動きについて説明しましょう。
足に「捻じれ」や「ゆがみ」などの変形があると、正常な動きができないのです。

その変形の代表的なものに、前足部内反ぜんそくぶないはん前足部外反ぜんそくぶがいはんというものがあります。
これらは前足部ぜんそくぶ(足の前半分)が後足部こうそくぶ(足の後ろ半分)に対して内側または外側に反っている状態をいいます。

前足部内反と前足部外反

足の前半分の内側が上がっている足(左)と外側が上がっている足(右)(Pod Mech vol.2. 株式会社インパクトトレーディング, 2006, p8, 11)

 

足のねじれの見方

こうやって足の変形(ねじれ・ゆがみ)を見ます。

下図は前足部内反ぜんそくぶないはんを持つ足の足裏が地面に着いたときの状態ですが、
距骨きょこつが正常なときよりも、大きく内側に動いている(踵骨しょうこつも内側に倒れている)ことが分かります。
このときの距骨下関節きょこつかかんせつの動きを「過回内かかいない」と呼びます。

過回内

足の変形が過回内(オーバープロネーション)を起こす。(Pod Mech vol.2. 株式会社インパクトトレーディング, 2006, p9)

距骨下関節きょこつかかんせつ過回内かかいないを起こすと、第1列(第1中足骨ちゅうそっこつ内側楔状骨ないそくけつじょうこつ)の3方向の動きが大きくなってしますのです。つまり

  • .正常な場合と比べて、先端が後端よりも相対的にさらに上がってしまう(つまり後端が先端よりも相対的にさらに下がってしまう)。
  • .正常な場合と比べて、床側の面がさらに内側を向く。
  • .正常な場合と比べて、第2中足骨ちゅうそっこつからさらに離れる方向(内側)に動く。
過回内と骨の異常な動き

過回内カカトが倒れるとその動きは足先の方に伝わる。

3-2.蹴り出すときの異常な動き

また蹴りだしのときには、距骨下関節きょこつかかんせつは正常のときのように回外運動かいがいうんどうを始めますが、
過剰に回内かいないしているため、十分な回外位かいがいいになれません(回内位かいないい中間位ちゅうかんい)。
そして踵骨しょうこつ立方骨りっぽうこつがロックされない状態で蹴りだしが行われます。

踵立方関節のアンロック

踵立方関節のアンロック

蹴りだしを行なうときに、距骨下関節きょこつかかんせつ回外位かいがいいになっていれば
下図(右)のように第1列がしっかりと下方に押しつけられます(矢印4)が、

距骨下関節きょこつかかんせつ回内位かいないいのままだと下図(左)のように第1列は上方に引かれます(矢印2)ので、
内側楔状骨ないそくけつじょうこつに続く第1中足骨ちゅうそっこつが不安定になります。
また中間位ちゅうかんいでも、第1中足骨ちゅうそっこつ回外位かいがいいのときほど安定はしません。

長腓骨筋腱と距骨下関節の関係

長腓骨筋腱と距骨下関節
(Pod Mech vol.2. 株式会社インパクトトレーディング, 2006, p20)

母指が地面に着いたときに、母指を曲げる筋肉は基節骨きせつこつを地面にしっかりと固定しています。
この状態で距骨下関節きょこつかかんせつ過回内かかいないを起こすと、中足骨ちゅうそっこつのような異常な動きをするため、
中足指節関節ちゅうそくしせつかんせつが亜脱臼を起こし、母指のつけ根は不安定になります。

外反母趾発生時の骨の動き1

第1中足指節関節の亜脱臼

すると地面を蹴るときに、母趾内転筋ぼしないてんきん横頭おうとう)が基節骨きせつこつを外側(Aの方向)に引っ張ってずらします。

外反母趾発生時の骨の動き2

外反母趾の形成

基節骨きせつこつがAの方向にずれるとともに、第1中足骨ちゅうそっこつがねじれることによって、
その裏にある種子骨しゅしこつの間の壁がだんだん破壊され、種子骨しゅしこつが外側に移動します

種子骨の破壊

種子骨の破壊

すると母指を曲げる筋肉や母指を反らす筋肉が、基節骨きせつこつを同時に外側(Bの方向)に引っ張るようになります。
やがて母指が第2指に当たるようになると、第1中足骨ちゅうそっこつが内側(Cの方向)に曲げられるようになります。
このような過程を経て外反母趾がひどくなっていきます。

外反母趾発生時の骨の動き2

外反母趾の悪化

[参考]
距骨下関節きょこつかかんせつ過回内かかいないが起こり、地面を蹴るときにしっかりと回外位かいがいいにならない状態では、
COP(Center of pressure、足圧中心そくあつちゅうしん)が正常のとき(下写真左)のように「踵骨しょうこつ立方骨りっぽうこつ」を通らず、
内側のエッジを通ります(下写真右)。
さらに第1中足骨ちゅうそっこつが不安定であるため、COPは第2、第3中足骨頭ちゅうそっこつとうを通ります。

足圧中心の軌跡の変化

足圧中心の軌跡の変化

3-3.過回内の防止こそが最大の外反母趾対策

この過回内かかいないによって外反母趾が起こり、過回内かかいないによって外反母趾が悪化します。
ですからこの過回内かかいないを防止することが最大の外反母趾対策となるのです。

足の捻じれやゆがみによって過回内かかいないが起こるのですから、
足の捻じれやゆがみを「矯正」すればよいと思うかもしれません。

しかし親から遺伝された顔かたちをトレーニング等で変えることができないのと同様に
足の捻じれやゆがみを変えることはできません。

そこで足の捻じれやゆがみを「補正」することを考えます。
それは足底板そくていばんによって行なわれます。

足底板

手術を除くと外反母趾には足底板を入れるのがベスト

その人の足に応じた足底板そくていばんを作り、その足の捻じれやゆがみを補正して
正常な動きに近づけるのです。

眼の悪い人がメガネをかけるのと同じだと思って下さればいいです。
この足底板そくていばんによる補正は足病学そくびょうがくでは一般的に行なわれていることです。

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