2種類の筋肉群は足の3大アーチをどのように支えているのか

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外反母趾を持つ足の多くは横アーチが低下して、開張足の状態になっています。
そのため外反母趾を改善するのに、足裏の筋肉を鍛えることが盛んに行なわれています。
足裏の筋肉を鍛えることによって、低下した横アーチを改善させようとしているのです。
この足のアーチを支えているものは筋肉なのでしょうか。それを確かめてみました。

1.足のアーチを支えるものは何か(1)

足にはアーチ(足弓)があるのは皆さん知っていらっしゃることと思います。横アーチ、内側縦アーチ、外側縦アーチの3つですね。

足弓

横アーチ[A-B]、内側縦アーチ[B-C]、外側縦アーチ[A-C] (カパンディ 関節生理学 Ⅱ.下肢 原著第5版.医歯薬出版株式会社, 1997, p221)

外反母趾はこのアーチのうち、横アーチが低下していることは知られていますが、何が原因でそのアーチが低下したのでしょうか。

その前にいったいそのアーチを作っているのは何なんでしょうか。まずはたくさんの骨がこのアーチを作るのに関わっていますが、骨だけではアーチはできません。これを支えるものがなければバラバラです。

考えられるのは筋肉と靭帯じんたいです。靭帯というのは骨と骨をしっかりと結び付けている硬いスジです。この靭帯がアーチに関わっているのは間違いないですが、筋肉はどうなんでしょうか。

足(足首から先)に関わる筋肉は大きく2つに分けることができます。ひとつはその筋肉の始まりも終わりも足(足首から先)にあるものです。もうひとつは大腿部(ふともも)や下腿部(すね)の骨から始まって足首から先の部分で終わるものです。

内在筋と外在筋

内在筋(左)は始まりも終わりも足の中にあり、外在筋(右)は始まりは足の外、終わりは足の中にある。足とは足首から先のこと。

前者はある地方でずっと生活しながら働いている労働者で、後者は別の地方に家族を残して出稼ぎに来ている労働者のようなものです。前者を内在筋ないざいきん、後者を外在筋がいざいきんといいます。

まずはその2つのうち、内在筋がアーチにどのように関わっているかというのを調べた論文を見てみましょう。論文の題名は「足の内在筋の位相性活動いそうせいかつどう」(注1)です。

この論文は

  • 平らなところを歩いているとき
  • 10度の傾斜のある坂を上り下りしているとき
  • 階段を上り下りしているとき
  • つま先立ちをしているとき
  • 立位で静止しているとき

の足にある6つの内在筋の活動を筋電図きんでんずで測定した結果を記録しています。

6つの内在筋とは

  • 短指伸筋(たんししんきん)
  • 母指外転筋(ぼしがいてんきん)
  • 短母指屈筋(たんぼしくっきん)
  • 短指屈筋(たんしくっきん)
  • 小指外転筋(しょうしがいてんきん)
  • 第3指と第4指の間の背側骨間筋(はいそくこっかんきん)

のことです。どの筋肉がどこにあるかは分からなくても大丈夫です。

このなかに次のような文章があります。
“When a person is standing quietly, there is no activity in the intrinsic muscles (except for short bursts of activity, which presumably are evidence of postural adjustments). This electrical silence supports the concept that muscle activity is not necessary to maintain the arch of the loaded foot when it is at rest.”

これを訳すと、
「(多分姿勢を調整している形跡であろう筋活動の短いバースト放電を除いては)人が立って静止しているときには、内在筋はまったく活動していない。筋肉の電気的活動がないというこの事実(電気的休止)は、安静時において体重の載った足のアーチを維持するのに筋肉の活動は必要ないという考えを裏付けるものである。」
となります。

簡単に言うと、じっと立っているときに足のアーチを支えているのは筋肉ではないということです。
では何が支えているかというと(骨と)靭帯じんたいという硬いスジです。
この硬い靭帯が伸ばされて開張足さらには外反母趾に進むのですが、たんに筋肉が弱ったぐらいではそんな変化は起きません。

ではもう一つの筋肉のグループ、つまり外在筋はどうなんでしょうか。

(注1) Mann R, Inman VT: Phasic activity of intrinsic muscles of the foot,  J Bone Joint Surg [Am] 46:469-481, 1964. [ フルテキスト]

 

2.足のアーチを支えるものは何か(2)

今度は内在筋だけではなく、外在筋の筋電図を測定した実験の結果を見てみましょう。外在筋というのは下腿部(ひざと足首の間)から始まって足部(足首から先)に終わる筋肉です。つまり遠くから足部に出稼ぎでかせぎに来ている筋肉です。論文の題名は「足弓支持そっきゅうしじにおける筋肉の役割」(注2)です。

これは、20人の男性を椅子に座らせ、直角に曲げた右ひざの上に100ポンド(約45キロ)、200ポンド(約90キロ)、400ポンド(約180キロ)の重りを載せたときに、6つの筋肉が働いているかどうかを観察した結果を論文にしたものです。

6つの筋肉とは4つの外在筋と2つの内在筋、つまり

  • 前脛骨筋(ぜんけいこつきん)
  • 後脛骨筋(こうけいこつきん)
  • 長腓骨筋(ちょうひこつきん)
  • 長母趾屈筋(ちょうぼしくっきん)
  • 母趾外転筋(ぼしがいてんきん)
  • 短趾屈筋(たんしくっきん)

です。最初の4つが外在筋で、残りの2つが内在筋です。これも別にどこにあるのかを知らなくても大丈夫です。

このとき

  • 足部を水平にした状態
  • 足部を水平位よりも20度上げた状態
  • 足部を水平位よりも20度下げた状態
  • 足の裏を20度だけ内側に向けた状態
  • 足の裏を20度だけ外側に向けた状態

にしておき、それぞれの状態で筋肉の働き具合を測定します。

その結果、片足に45キロあるいは90キロの重りを載せたとき、アーチを支える骨と靭帯は筋肉が働かなくても、容易にそれらの重さに耐えることができました。そして180キロの重りを載せたときに、筋肉は働くようになりますが、そのときでも多くの筋肉は不活発なままだったのです。

結局分かったことは、第一線でアーチを守っているのは靭帯じんたいという硬いスジなのです。そして歩行中のカカトが上がってからつま先が離れるまでのように、足部にたいへん大きな重さがかかるときには靭帯がアーチを守るのに加えて、筋肉が反射的に働いてアーチを守るのに加わるのです。

この実験から靭帯がまずアーチを守っているのですが、非常に大きな重さが足にかかったときには筋肉もアーチを守るのに使われることが分かります。では靭帯と筋肉のどちらが先におかしくなって、アーチが低下するのでしょうか。靭帯が伸ばされるのが先か、筋肉が弱るのが先か。

(注2) Basmajian JV, Stecko G: The role of muscles in arch support of the foot, J Bone Joint Surg 45A:1184-1190, 1963.  [フルテキスト]

3.靭帯が先か、筋肉が先か、そしてその原因は?

筋肉が靭帯に先んじて弱ると考えると、ある疑問が湧いてきます。

筋肉が弱ることが外反母趾の根本原因だとする説では、筋肉を使わない生活習慣が筋肉を弱らせるとしています。そうすると遺伝との関係が説明できません。母と娘で、あるいは祖母と孫娘で筋肉を弱らせる似たような生活習慣があるということになりますが、それが一体遺伝とどのような関係があるのでしょうか。

そもそも「習慣」とは何かというとwikipediaでは次のように書かれています。
「習慣(しゅうかん、英: habit)とは、日常的に繰り返される行いのことであり、その土地の文化にも影響する。その人の習慣は、後天的な行動様式であり、反復して行われることで固定化される。身体的な振る舞いの他に、考え方など精神的、心理的な傾向をも含む。人の成功に影響する所が大きいため、『習慣は第二の天性なり』とも言われる。」(赤い着色は筆者)

ここで気をつけていただきたいのは「後天的な行動様式」というところです。「先天的(生まれつき)」ではないのです。「後天的」なのです。それに対して遺伝は「先天的(生まれつき)」であり、全く逆なのです。

それとも筋肉を使わない生活習慣が筋肉を弱らせるのではなく、アーチを形成する筋肉が(アーチの低下に先がけて)弱ってしまう遺伝的要因が何かあるのでしょうか。

一方、靭帯が先に伸ばされるというのは遺伝との説明がつきます。

人は親を通して様々なものを受け継ぎます。骨格の構造もその一つです。骨格は遺伝によって両親のいずれかによく似ていますし、時には隔世遺伝によって祖父母に似ていることもあります。

ですから骨格の一部である足の形も似ると考えてもおかしくありません。外反母趾を起こしやすい骨格が両親あるいは祖父母から受け継がれると考えられるのはそれほど奇異には感じません。

前足部内反と前足部外反

足のねじれの例 足の前半分の内側が上がっている足(左)と外側が上がっている足(右) (Pod Mech vol.2. 株式会社インパクトトレーディング, 2006, p8, 11)

 

足のねじれの見方

このようにして足の変形(ねじれ・ゆがみ)を見ます。

足の骨格が似ていると、足の動きやそれに伴う歩き方も似てくるというのは不自然ではないと思います。「足病学で説明されている、外反母趾発生の真のメカニズムとは」で説明したようにカカトが内側に倒れて足の前後が長くなり、さらに第1中足骨が内側に広げられて足の左右が広くなる。するとそれに伴って骨と骨を結びつけている靭帯が引き伸ばされ、アーチが低下する。

筋肉は何とかアーチが下がらないように、正常の場合よりも一足ごとに長時間働かされる。それがある限度を超すと筋肉にトリガーポイントが形成されたり、筋肉の腱が炎症を起こしたりするようになり、やがて筋力が低下する。

この考え方は上述の「筋肉の弱りが靭帯が伸ばされることに先行する」と考えるのよりも自然ではないでしょうか。

4.アーチの低下が筋肉をより働かせる

アーチが低下すると、正常の場合よりも筋肉が働かされるのは「1.足のアーチを支えるものは何か(1)」で紹介した「足の内在筋の位相性活動」という論文に書かれています。

この論文の中に、正常足と扁平足の筋肉の働きを比較した図があります。左が正常足で右が扁平足の場合です。

正常足と扁平足の筋肉の働き

上の図の中のレッドの下線は母趾外転筋で、グリーンの下線は背側骨間筋です。
(Mann R, Inman VT: Phasic activity of intrinsic muscles of the foot. J Bone Joint Surg [Am]) 46:472, 1964.)

母指外転筋

母指外転筋(カパンディ 関節生理学 Ⅱ.下肢 原著第5版.医歯薬出版株式会社, 1997, p223)(一部改変)

最初の図の左右の図を比べてください。背側骨間筋はいそくこっかんきんの働きは正常足も扁平足もたいして変わりません。しかし母趾外転筋ぼしがいてんきんの働きは大きな違いがあります。

どういう違いでしょうか。

それは扁平足の方が母趾外転筋が働いている時間が長いのです。

この母趾外転筋というのは足の親指をひらく筋肉であり、また同時にたてアーチに関与する重要な筋肉です。

この筋肉は弱っているどころか通常以上に働いていて、扁平なアーチをあたかも何とか持ち上げようとしているように見えます。しかしこのような状態が長期間継続されると筋肉そのものが弱ることもあるでしょう。しかしその場合には使わなかったから弱ったのでは決してなく、使われ過ぎて弱ったのです。

5.外反母趾の改善に絶対に必要なこと

これまでに述べたことで分かるように、
外反母趾は生まれ持った足の異常な構造によって
骨と骨を結び付けている靭帯じんたいという硬いスジが伸ばされてアーチが低下し、
さらにアーチの低下によって筋肉が通常以上に働かされて、その筋肉も弱ってくるのであると考えられます。

またじっと立っているときに足の筋肉はまったく働いていません。
その足が外反母趾であり、横アーチが低下しているのならば、
働いてはない筋肉を鍛えても意味がないのではないかと考えられます。

ですから筋肉を鍛えるだけではアーチの低下を防いだり、アーチを改善したりすることはできません。
アーチの低下の原因になっている足の異常な構造を何とかしなければいけないのです。

しかし足の異常な構造は遺伝的に親から受け継いだものなのでどうすることもできません。
そこで足底板そくていばんを使うのです。
足底板が低下したアーチを支えてくれるのです。

足底板

手術を除くと外反母趾には足底板を入れるのがベスト

そういうと外反母趾が治ることにはならないのではないのか、とおっしゃるかもしれません。
その通りです。

ごく一部の軽い外反母趾以外は、エクセサイズやストレッチやテーピングでは治りません。
また治ったように見えても再び親指は曲がってきます。
手術以外にはないのです。

有名な女性アナウンサーがつま先運動で外反母趾を見事に完治させましたが、
その後ご自身のブログでふたたび外反母趾の痛みを訴えていらっしゃいます。

ですから外反母趾にならないように、あるいは悪化させないように
絶えず足底板を使い続けなければいけないのです。
目が悪い方がメガネを使い続けなければいけないのと同じことです。

 

 

 

 

 

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治療家も真っ青!超短期間で痛みを1/10にする方法

この記事は 2で読めます。

足や膝や腰のトラブルに関しては

さまざまな施術方法が存在します。

 

しかし欧米で研究が進んでいる「足病学」の理論に基づいた施術方法は

まだ一般的には知られていません。

 

私たちの身体の構造は多くは遺伝によって

両親から引き継いでいます。

足の構造も両親のどちらかから引き継いでいるのです。

 

足に異常な構造があると、それは足の異常な動きを生みだし、

さらにスネ、膝、フトモモ、骨盤、背骨に異常な動きを発生します。

 

その異常な動きは

シンスプリント、変形性膝関節症、変形性股関節症、坐骨神経痛、

腰椎椎間板ヘルニア、腰椎分離症、腰椎すべり症、腰痛、

頸の痛み、猫背、ストレートネックなど

さまざまなトラブルを引き起こすのです。

 

これらの疾患から来た痛みを改善するのには

まずは足の異常な構造を足底板(そくていばん)によって補正し、

足の正しい動きを作ってやらなければなりません。

 

そして身体の動きを正常に近づけた上で、

痛みを出している部分(ほとんどは筋肉です)の施術を行います。

 

欧米では足底板はごく一般的に使用されていますが、

日本ではあまり一般には知られていません。

 

あなたも足病学に基づく施術を受け、

一日も早く、身体のトラブルを改善させてください。


一日も早く身体の痛みを解消したい方はこちらへ

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