
足の親指の付け根が飛び出して、さらに痛みまで出ている状態の方がたくさんいらっしゃいます。これを読んで下さっているあなたは現在、外反母趾で困っているのでしょうか。もしそうならばまずは外反母趾とはどういうものかをしっかりと知っていただきたいと思います。
いたずらに治療法を追いかけるのではなく、まずは自分の足がどういう状態なのかをはっきりと理解して下さい。ネット上には様々な情報が飛び交っています。まさに玉石混淆(ぎょくせきこんこう)と言ってもいい状態です。
外反母趾という病名そのものは今日では一般に広く知られていますが、ここでは外反母趾について詳しく述べたいと思います。
また外反母趾と同時に出やすい内反小趾、外反母趾に似ているけれども少し違う強剛母趾についても説明します。とくに強剛母趾はケアの方法がまったく違うので注意が必要です。
目次
1.外反母趾とは。そしてその特徴は。
「外反母趾」という病名は多くの方が聞いたことがあるでしょうが、その症状ははっきりとは知られていないようです。
外反母趾とは足の親指が外側に捻じれながら、かつ小指の方向に曲がって変形して「くの字」の状態になっている状態を指します。
15度以上曲がったものを外反母趾としている書物や、20度以上を外反母趾としている書物があります。

軽度の外反母趾
その特徴は次のようなものです。
- 親指が曲がった結果、親指の付け根が飛び出てしまい、そこに炎症が起こったり、痛みが出たりするようになります。これをバニオンと言います。
- 親指の変形が大きくても、あまり痛みのない場合もあります。
- 親指に押されて、第2指も外側に曲がることがあります。またひどくなると親指が第2指の下に潜り込むようになります。
- 慢性関節リウマチと合併することがあります。
- 男性よりも女性に多く、その差は9倍だと言われています。
- ハイヒールを履く女性はそれを履かない女性よりも外反母趾になっている割合が高いです。
- 家族に外反母趾がいる人はいない人よりも外反母趾になっている割合が高いです。
- 年齢が進むほど症状はひどくなる傾向があります。
2.外反母趾の分類
外反母趾は外反母趾角または症状によって分類されます。
2-1.外反母趾角による分類
外反母趾は体重をかけた状態での親指の曲がった角度によって軽症、中程度、重症に分類されます。
親指の曲がった角度というのは第1中足骨(ちゅうそっこつ)の長軸と親指の基節骨(きせつこつ)の長軸のなす角度で、これを外反母趾角(HV角)といいます。

外反母趾角
中程度以上の外反母趾は歩くだけで親指がますます外側に移動し、やがて痛みも強くなります。
- 正 常-0~15度
- 軽 症-15~30度(または15~20度)
- 中程度-30~40度(または20~40度)
- 重 症-40度~
2-2.症状による分類
また症状によっても分類されています。
2-2-1.可逆期
「可逆(かぎゃく)」とは元に戻りうるという意味です。
そして可逆期とは自分で足の親指に力を入れたり、自分の手で親指を引っ張ると、親指が元に戻る状態です。
靴の中では靴に押されて親指が外側に移動していますが、靴を脱げば元の正常な 状態に戻ります。
筋肉・靭帯・関節包がまだ十分に伸び縮みする状態にあります。
2-2-2.拘縮期
続いて可逆期から拘縮(こうしゅく)期に入ります。
「拘縮」とは関節の動く範囲が制限されることです。
この時期には足の親指の付け根の関節の靭帯や関節包が固まってしまい、
親指を外側(小指側)に動かす筋肉も縮こまるため、自分で親指に力を入れても、
自分の手で親指を引っ張っても、親指は元の正常な状態には戻らなくなります。
2-2-3.進行期
拘縮期を経ると進行期になります。
足の親指の関節が、親指を曲げる筋肉の腱の外側に出てしまいます。
こうなると親指に体重をかけたり、親指を使って歩こうとするだけで親指が外側に曲がるようになります。
2-2-4.終末期
そして外反母趾は最終段階になります。
親指の付け根の関節が脱臼し、さらに第2指が親指の上に重なるようになります。
3.外反母趾の原因
整形外科学では女性、ハイヒール、遺伝が外反母趾の三大原因とされています。
また欧米で研究の進んでいる足病学では、過剰な回内(オーバープロネーション、過回内)が原因だとされています。この足の異常な動きによって外反母趾が引き起こされます。
過剰な回内(オーバープロネーション)というのは足全体が内側に倒れることです。

足の変形が過回内(オーバープロネーション)を起こす。(Pod Mech vol.2. 株式会社インパクトトレーディング, 2006, p9)
4.外反母趾角の測り方
整形外科病院に行けばレントゲン写真を撮ってもらえますので、外反母趾かどうかはすぐに分かります。
ひどい人は外反母趾かどうかは見ただけで分かりますが、ひどくない人の場合は分かり難いこともあります。
また見ただけで外反母趾と分かっても、外反母趾角が知りたいと思われる方もいらっしゃるでしょう。
そんな時には自分でその角度を測る方法があります。
外反母趾角というのは、実際には第1中足骨と母指の基節骨の角度で測るのですが、
足の外側のラインの角度で測っても大きな差はあまりありません。
コピー用紙と物差しがあれば、下のような方法で簡単に履かれます。
- コピー用紙の上に線を引きます。
- その線に足の側面を合わせます。
- この状態で足の親指の側面に線を引きます。
- 両方の線のなす角度が外反母趾角です。
![]() まず線を引く。 |
![]() その線に足の側面を合わせる。 |
![]() 親指の側面に合わせて線を引く。 |
![]() この2つの線のなす角度が外反母趾角。この人は外反母趾ではありません。 |
5.外反母趾と関係のある病気・症状
外反母趾はさまざまな症状と結び付く傾向があります。
厳密に言うと、過剰な回内(オーバープロネーション)が外反母趾のみならず、
他の色々な疾患や症状の原因になったり、それらの誘因になったりします。
外反母趾と深い関係にある病名や症状を見てみましょう。次のようなものがあります。
- 足部-内反小趾、浮き指、足底腱膜炎と踵骨棘、タコなど。
- 膝部-膝痛、変形性膝関節症、ランナー膝など。
- 腰部-腰痛、坐骨神経痛、骨盤のずれなど。
- 背部-側弯症、猫背など。
- 頚部-首のこり、肩こりなど。
- 頭部-偏頭痛、顎関節症など。
6.強剛母趾を外反母趾と間違えないで!
外反母趾に似ているものに「強剛母趾(きょうごうぼし)」があります。
これは親指の付け根の関節が動きにくくなった状態で、親指を反らすと付け根に痛みが出ます。
親指の付け根で2つの骨が衝突して、だんだん変形しているのです。
外反母趾の痛みは親指の付け根の内側に出ますが、強剛母趾の場合は付け根全体が痛みます。
歩くときや走るとき、あるいは拭き掃除するときのように親指を反らした状態にするときに痛みが出ます。
裸足の状態でも痛みが出るのです。
外反母趾と強剛母趾とがミックスされたタイプもあります。
強剛母趾の場合、あるいは外反母趾と強剛母趾が混じった場合は、
純粋な外反母趾とは少し違ったケアをしなくてはいけません。
強剛母趾の人に外反母趾で使う指を広げるテープを貼ると、
ますます親指の付け根で骨同士が衝突することになりますので、
注意が必要です。
強剛母趾の詳細は「親指の付け根が反らなくなり、蹴るときに痛みが出る強剛母趾の治し方」をご覧になって下さい。
7.内反小趾
外反母趾という言葉は知っていても、内反小趾というのは知らない方がたくさんいらっしゃいます。
「小指側の外反母趾」と仰るかたもいらっしゃいました。外反母趾の小指バージョンですね。
内反小趾は外反母趾または強剛母趾と一緒に発生することが多いです。
小指が横向きに寝て、親指の方向に曲がっている状態です。
小指の外側や小指の付け根に痛みが出ることもあります。
8.最後に
外反母趾はひどくなる前にしっかりとした予防をしておけばよいのですが、
放置していたために手術を受けなくてはならなくなる場合も少なからずあります。
少しでも異常に気がついたら、すぐに信頼できる医師に診てもらい、
手術が必要だと言われた場合は手術を考えるとよいと思います。
また様子を見ましょう、と言われた場合は自分でできる努力をするのことも大切です。
このサイトではその方法をできるだけ詳しく説明します。
さらに手術を受けた方は、術後の経過が順調になるヒントも別の記事で書く予定です。
実際に多くの方々が外反母趾の痛みから解放されて安穏な日々を送っています。