
内反小趾は外反母趾の小指版ともいえるもので、小指が内側に曲がっている状態です。比較的多くの人に見られ、自覚症状はあまりないのですが、時には小指の外側面や、小指の付け根の側面または裏面に痛みを伴うこともあります。ここでは内反小趾の原因とその対策について述べたいと思います。
目次
1.内反小趾とは
内反小趾とは第5指(小指)が第1指(母指)の方に捻じれながら曲がり、小指の付け根が飛び出ている状態です。外反母趾と内反小趾の両方を持つ足も多く、第5指が浮き指になっている場合もよく見られます。第5指の付け根の側面が腫れて痛みが出る場合や、第5指の付け根の裏面にタコ(胼胝)ができて痛む場合もあります。内転内反小趾、内転小趾とも言われます。
2.内反小趾の発生メカニズム
私たちの足の形はひとりひとり違いますが、足病学ではそれらをいくつかのタイプに分類しています。そして内反小趾は足のタイプによって発生するメカニズムが違います。大事なことは決して足裏の筋肉が弱ったのが根本的な原因ではないということです。
2-1.内反小趾のメカニズム(タイプ1)
まず一つ目のタイプは
- カカトの骨が下腿部(ヒザから足首まで)に対して内側に曲がっている場合(A)
- O脚の場合や、スネの骨の彎曲が大きい場合(B)
- 足の前半分が後ろ半分に対して内側に反っている場合(C)
などで、とくに距骨下関節にあまり動きのないときにできます。Cの場合はアーチの高さは正常ですが、AとBの場合は足の甲が高くなる傾向があります(ハイアーチ)。
これらの足は小指の付け根の骨(第5中足骨)の先端が地面に着いたときに、正常な足よりも衝撃を受けます。正常な足でも
①.床からの反発力により先端は上方に押し上げられ(実際には移動しません)、体重によって後端は下方に下げられる。
②.床側の面が外側を向く。
③.第4中足骨から離れる方向(外側)に動く。
という動きをしますが、このタイプの足ではこれらの動きが正常な足よりも大きくなるのです。
第5指の骨(基節骨)は地面に筋肉でしっかりと固定されているので、第5中足骨が①~③のような動きをすると第5指が内側に曲がりながら、その床側の面を内側に向けるようになります。
そして小指の付け根の骨(第5中足骨)の先端の裏面に大きなタコ(胼胝)ができることがあり、ときにはそれが痛みます。しかし第5指の曲がる角度はあまり大きくはありません。
2-2.内反小趾のメカニズム(タイプ2)
次のタイプの内反小趾は、足の前半分が後ろ半分に対して内側に反っている足に起こる場合で、しかも距骨下関節がよく動くときにできます。
このタイプの足に生じる内反小趾では第5指(小指)の付け根の骨(第5中足骨)の先端が外側に飛び出してきて、赤く腫れることもあります。このコブを小腱膜瘤(またはテーラーの腱膜瘤、テーラーズ・バニオン、バニオネット)と言います。
テーラー(tailor)とは洋服の仕立屋のことで、昔仕立屋が硬い床の上であぐらをかいて長時間仕事をしていて、この部分によくこのコブができたのでこの名前があります。痛みがあることもない訳ではありませんが、次の「タイプ3」ほどは痛みません。
発生メカニズムを述べましょう。この足を持つ人が着地したとき、カカトが大きく内側に倒れこみます。
この時、第5中足骨は下記のような動きをします。
①.床からの反発力により先端は上方に押し上げられ(実際には移動しません)、体重によって後端は下方に下げられる。
②.床側の面が外側を向く。
③.第4中足骨から離れる方向(外側)に動く。
これらは正常な足でも起きるのですが、このタイプの足は正常な足以上に、さらに上で述べた「タイプ1」の足以上に動きが大きくなるのです。
第5指の骨(基節骨)は地面に筋肉でしっかりと固定されているので、第5中足骨が①~③のような動きをすると第5指が内側に曲がりながら、その床側の面を内側に向けるようになります。とくに③の動きが大きいため、第5指の曲がり方は「タイプ1」以上です。浮き指になっていることが多いです。
2-3.内反小趾のメカニズム(タイプ3)
このタイプの内反小趾は、足の前半分の外側が後ろ半分に対して反っている場合で、しかも距骨下関節がよく動く足に起こります。
このタイプの足はカカトが着地したあとに、第1指(親指)側が先に地面に着き、それから足が外側に倒れて第5指(小指)側が地面に着きます。しかしこの状態は見て分かるように非常に不安定です(捻挫を起こす方向に倒れています)。
そこでアキレス腱が働いてカカトが持ち上げられ体重が指の付け根にかかった時に、カカトを内側に倒して(①)安定な状態を作ろうとします。この時に第1中足骨と第5中足骨は図のように回転するのです(②、③)。すると小指の付け根にできた小腱膜瘤がクツに刺激されて、激しい痛みを出します。
3.内反小趾の痛みの有無
上記のうち、「タイプ1」は第5指の付け根の足裏側のタコが痛むことがあります。「タイプ2」も「タイプ3」も第5指の付け根の側面が痛むことがありますが、「タイプ2」が第5指の曲がり方は大きいですが痛むことはまれです。
「タイプ3」はかなり痛みが大きくなります。初めはときどき痛む程度であっても、そのうちにクツを履いて歩き始めるとすぐに痛みが出て、その痛みがクツを履いている時に慢性的に続くようになります。左右の足で内反小趾の痛みが違うのは、左右の足のタイプが違うことが原因であることがよくあります。
4.内反小趾対策
4-1.靴選び
欧米で研究の進んでいる「足病学」で言われている内反小趾の発生メカニズムを書きましたが、これを読んでいただければ筋肉を鍛えることがあまり意味がないことに気づくと思います。また単に第5指を広げるテーピングをしたところで、根本的な解決にはなりません(まったく無駄ということはないですが)。この「内反小趾対策」を行った上でテーピングを行うとテーピングの効果がかなり高まります。テーピングの方法は「5.内反小趾のテーピング」をご覧になって下さい。
まず行わなければならないのは足の異常な動きを抑えることです。
そのためにはまず、構造のすぐれたクツを購入することから始めて下さい。大阪にある当院ではニューバランス大阪のウォーキングシューズをお勧めしていますが、アシックスやミズノにもすばらしいクツがあります。
そしてクツを選ぶときには信頼のおけるシューフィッターの方にアドバイスをもらいましょう。仕事上、パンプスを履かなければいけない方もシューフィッターの方と話し合って選ぶのがよいと思います。その際にヒール高は3~5センチにしておいて下さい。
なおウォーキングシューズの選び方については
「外反母趾の人生をバラ色にするシューズ選びの3つのポイント」をご覧になってください。
またパンプスの選び方については
「ハイヒールのパンプスが女性に及ぼす6つの悪影響とその対策」の中に書いておきました。
4-2.足底板とインソール
クツを選んだらその中にインソール(既製品)や足底板(オーダーメイド)を入れましょう。これらが足の異常な動きを最小限にしてくれます。前足部の内側が上がったり、外側が上がったりしているタイプの足の場合は足底板の方がよいです。
また上で述べたタイプ1のAやBのように前足部に異常がない場合はインソールでもよいと思います。
足底板やインソールを入れたらその場で歩行時の痛みがなくなる方もたくさんいらっしゃいます。
足底板については「外反母趾の痛みを劇的に改善するクツの中敷き(インソール)」に詳しく書かれています。
5.内反小趾のテーピング
5-1.テープの準備
まず準備するものは
- 幅が3.8センチのホワイトテープ(伸び縮みしないテープ)
- 幅が5センチのテープ(伸び縮みするテープ)
の2つだけです。
伸び縮みするテープを切って、
- 幅5センチ、長さ
20センチ30センチ(下記の写真は20センチになっています) - 幅2.5センチ、長さ10センチ
- 幅1.5センチ、長さ7センチ
のものを作っておく。
5-2.テープの巻き方
①まずホワイトテープを幅2~2.5センチで、長さ10センチに切り、親指の爪の下に巻きつける。
②次にホワイトテープを幅1~1.5センチで、長さ7センチに切り、小指の爪の下に巻きつける。
③次にホワイトテープを幅は3.8センチのままで、長さ30センチに切り、足の甲から足の裏に1周させる。
④次にホワイトテープを幅2センチで、長さ10センチに切り、親指に巻いたホワイトテープから足の甲に巻いたホワイトテープまで貼りつける。このテープは足の甲と足の裏の境い目の中央を通るように貼りつける。
⑤幅2.5センチ、長さ10センチに切っておいた伸び縮みするテープを、親指のホワイトテープの上に重ねて巻きつける。
⑥次にホワイトテープを幅1.5センチで、長さ8センチに切り、小指に巻いたホワイトテープから足の甲に巻いたホワイトテープまで貼りつける。このテープも足の甲と足の裏の境い目の中央を通るように貼りつける。
⑦幅1.5センチ、長さ7センチに切っておいた伸び縮みするテープを、小指のホワイトテープの上に重ねて巻きつける。
⑧上記の④で貼ったホワイトテープを外し、親指と小指がまっすぐなるようにテープを緊張させた上で再び貼り付ける。
⑨上記の⑤で貼ったホワイトテープを外し、親指と小指がまっすぐなるようにテープを緊張させた上で再び貼り付ける。
⑩足の甲のホワイトテープの上に幅5センチ、長さ30センチの伸び縮みするテープを巻きつける。これで完成である。
注意する点は親指や小指や足の甲に巻きつけるテープを締めすぎないことと、親指や小指を戻すときに引っ張り過ぎないことである。
足の大きさはみんな違うので、テープの幅や長さは自分の足の大きさに合わせて、多少大きくしたり小さくしたりしてほしい。
親指が外反母趾ではない人は①と④と⑤は省略してください。そして大変重要なこと。親指が強剛母趾になっている人は①と④と⑤は貼らないでください。
強剛母趾については「親指が反らなくなり、蹴るときに痛みが出る強剛母趾の治し方」をご覧になってください。
テーピングを貼っている途中で異常な症状が出た場合には、専門家にすぐに相談してください。