
強剛母趾とはどういうものであろうか。
足の親指の付け根の関節を動かすとき、とくに親指が反るときに痛みが出る。初めはハイヒールを履いたり、つま先立ちをしたりしたときに感じるくらいである。あるいは靴の紐を結んだり、拭き掃除をしているときに少し痛いかなと感じるくらいかもしれない。
が、やがて歩行時の蹴り出しの際に痛みが出るようになり、歩くのに苦痛を覚えるようになる。そして最終的にはまったく動かなくなり、歩行が困難になることさえもある。強直母趾とも呼ばれる。
1.強剛母趾の症状
- 親指が反りにくいのが特徴である。
- 親指を反らすと痛みが出ることが多いが、反りにくいだけで痛みが出ない段階もある。
- 痛みによって歩行が困難になる。
- ひどくなるとまったく反らなくなる。
- 親指の付け根の甲側に骨の出っ張りがあることが分かる。
- 外反母趾を併発していることもある。
- 強剛母趾を「仮骨性外反母趾」、外反母趾を併発した強剛母趾を「混合性外反母趾」と呼んでいる人もいる。
- 軽度の場合は制限母趾と呼ばれることもある。
2.強剛母趾の原因
- 足にねじれやゆがみがあって、足が内側に倒れ過ぎる。
- 第2中足骨よりも第1中足骨が長い。
- 怪我によるもの。
3.強剛母趾発生のメカニズム
足にねじれやゆがみがあって、足が内側に倒れ過ぎる場合について説明する。これは外反母趾とほぼ同じ原因である。強剛母趾も外反母趾と似たようなメカニズムで起こるのだ。
強剛母趾を起こす足のタイプもいくつかあるが、ここでは足の前半分の内側が少し上がっているタイプの足を例にとって説明する。右の写真のように足を観察すると足のゆがみが分かる。
外反母趾と対比して説明しよう。
![]() 足の前半分の内側が少しだけ上がっている足(Pod Mech vol.2. 株式会社インパクトトレーディング, 2006, p8) |
![]() 足の変形(ねじれ・ゆがみ)の見方 |
カカトが地面に着いたあと、小指の付け根が地面に着き、さらに足裏全体が地面に着くのであるが、
足の前半分の内側が上がっているため、カカトは内側に倒れて過ぎてしまう。

足の変形が過回内(オーバープロネーション)を起こす。
このときに第1中足骨は3つの方向に動かされる。

過回内カカトが倒れるとその動きは足先の方に伝わる。
外反母趾になる場合は⑥の動きが大きいのであるが、第1中足骨は内側へ大きく移動する。
このとき足の親指の骨(基節骨、きせつこつ)はしっかりと地面に着いているので、第1中足骨と基節骨がズレて亜脱臼を起こす。これが外反母趾の始まりである。

外反母趾が形成されるメカニズム
一方、強剛母趾が発生する場合は3つの方向のうち、④の方向の動きが大きい。
親指の付け根が地面に着くと、第1中足骨の先端には地面から上向きの力を受けるが、
先端が重力に逆らって上がることはない。その代わりに第1中足骨の後ろが下がるのである。

第1中足骨の先端が受けた衝撃は、第1列(第1中足骨+内側楔状骨)の後部を下げる。
第1中足骨の後ろが下がると、第1中足骨の先端と基節骨の間で衝突が起こる。
これが繰り返されると、だんだんこの関節が変形し、動きにくくなっていくのである。

強剛母趾のメカニズム(Pod Mech vol.2. 株式会社インパクトトレーディング, 2006, p19)
4.強剛母趾と外反母趾の関係
上で述べたように、外反母趾も強剛母趾も同じようなメカニズムで発生する。
では外反母趾なるのか、それとも強剛母趾になるのかが何によって決まるかというと、第2中足骨の傾きで決まるとされている。
もう少し細かく言うと、足部(足首から先)は前半分と後ろ半分に分けらるが、後ろ半分の真ん中を通る軸(下図のグリーンの線)と第2中足骨の真ん中を通る軸(ピンクの線)を引いたときに、両者が平行か、あるいは両者のなす角度が10度以下のときは強剛母趾になると言われ、11度以上のときは外反母趾になると言われている。
5.強剛母趾の治療法
強剛母趾の人に必要なのはクツ、足底板、特殊なサンダルである。
5-1.クツ
まずはクツ選びがとても重要である。外反母趾の場合は親指の付け根の部分で、しっかりと曲がる構造のものがよいのであるが、強剛母趾あるいは外反母趾を伴った強剛母趾の場合は、この部分に柔軟性のないものがよい。
しかしこの部分が硬くてまっすぐであると、踏み返しができないので、つま先が上がっているものがよい。
またカカトの周りが硬くて、クツをねじっても形崩れしないものがよい。
このような構造のものは、足が倒れるのを防ぐ働きを持っている。

構造的に優れた靴
5-2.足底板
足の捻じれやゆがみの影響が出ないように、足底板を使って足を補正する。
体重をかけない状態で作った足底板が理想的である。これをクツの中に入れる。

体重をかけずに作る足底板
5-3.特殊なサンダル
家の中でも足底板を入れたクツを履いておくのが理想であるが、日本の住宅事情では難しい(フローリングの部屋で履いている人もいるが)。
そこでアメリカの足病医によって開発された特殊なサンダルをお勧めしたい。
夏場は素足で、冬場は五本指ソックスを履いて使うのがよいであろう。

特殊なサンダル
5-4.テーピング
強剛母趾の足に対して、外反母趾に行なうような親指を広げるようなテーピングを行なってもほとんど意味がない。いや、意味がないどころか、逆効果の場合もある。
外反母趾のテーピングを行なうと、親指を広げるだけではなく、親指をカカトの方向に引っ張る力が働く。するとますます第1中足骨と基節骨が衝突しやすくなるのである。
では外反母趾と強剛母趾がミックスされた足の場合はどうか。
これはケース・バイ・ケースで、強剛母趾の程度が低ければ効果がある場合もある。
強剛母趾の程度の低いものを足病学では制限母趾と呼ぶこともある。
テーピングを貼らずに、足の指の付け根を包帯で固定しておくと、親指が反り難いので、痛みが出ないこともある。
その上からソックスを履くのであるが、靴と足底板をまず使うことが大事で、包帯は補助的に使うべきである。

足の指の付け根に包帯を巻き、その上からソックスを履く
強剛拇指(右足の親指)と診断されました。インソールは直ぐに作りましたが、歩く時に庇っていたらしく腰も痛くなりました。室内でも履けるサンダルはどちらで購入できますでしょうか。教え頂けれは助かります。よろしくお願い致します。
中村様。コメントありがとうございます。
相談・予約のフォーム(http://www.gaihan.com/contact)からお問い合わせくださいましたら、購入方法をお知らせいたします。
その際に足のサイズをお書き下さい。よろしくお願いいたします。