
中足骨疲労骨折は使い過ぎ(オーバーユース)が原因で起こると言われてきましたが、それ以外にもバイオメカニクス的な観点から見ると、足の異常な動きからも発生します。ここではこれまでの考え方にバイオメカニクス的な考え方を加えて、中足骨疲労骨折を説明したいと思います。
1.中足骨疲労骨折とは
中足骨に発生した疲労骨折のことです。第3中足骨にもっとも発生し、第2、第4、第5中足骨の順に多く発生します。第1中足骨に発生するのはまれです。中足骨は脛骨に次いで疲労骨折が多い場所です。
ほとんどは中足骨の遠位1/3部に見られますが、バレリーナのようにつま先立ちを繰り返し行なう場合には、第2中足骨骨幹部の中枢よりに発生することもまれにあります。
長距離や短距離のランナー、体操選手、バレリーナなどに多く、また長時間の歩行を行った軍隊に発生するため、「行軍骨折」とも呼ばれます。
2.中足骨疲労骨折の症状
疲労骨折になっても痛みが急には出ない場合があります。この場合は同じ動作を続けてしまうことになりますが、そのうちに痛みがだんだん強くなり、さらに腫れや発赤も生じるようになります。また急激に痛みが発生する場合もあります。
早期にはレントゲン撮影ではこのヒビは写りにくいため、疲労骨折だとは分からないことが多いのですが、圧痛や運動時痛があって腫れや発赤が見られるときは、疲労骨折を疑うことが重要です。2~3週間経つとレントゲン写真に写るようになります。
痛みは足部の中央か前方に感じ、骨折部に圧痛を感じます。歩いたり、走ったり、ダンスをしたりするときのように体重をかけると痛みがひどくなります。
3.中足骨疲労骨折の発生メカニズム
3-1.使い過ぎ(オーバーユース)
ランニングやジャンプなどの反復的な動作が、足部アーチを形成する中足骨にかかることによって発生します。
3-2.過回内(オーバープロネーション)
私たちの足の形は遺伝によって、両親のどちらかの足の捻じれやゆがみを引き継いでいます。足の前半分の内側が上がっているタイプの足を持っている場合を考えてみましょう。
このタイプの足は足裏全体が地面に着くときに大きく内側に倒れます。この異常な動きを過回内(オーバープロネーション)と言います。
このとき第1中足骨は④~⑥の3つの方向に大きく動かされます。
第1中足骨にはその後部が下がり、前部が上がる力がかかります。第5中足骨にも同様な鉛直方向の力が加わるため、横アーチが低下します。
すると第2、第3中足骨にかかる負荷が大きくなり、疲労骨折を起こしやすくなります。
また過回内が起こると前足部には、外方向への水平面上の力が作用するため、中足骨に捻じれが起こり、いっそう疲労骨折を起こしやすくなります(下図参照)。
3-3.過回外(オーバースピネーション)
次に足の前半分の外側が上がっているタイプの足を持っている場合を考えてみましょう。
このタイプの足が地面に着くときに、足全体は外側に倒れます。これを過回外(オーバースピネーション)といいます。
足が外側に倒れると、地面からの衝撃を吸収することができないため、中足骨には大きな力が床から加わります。これによって中足骨が疲労骨折を起こすリスクが高まります。