
若い女性で下肢の冷えを訴える方々はとても多いのですが、その方々はたいてい外反母趾や浮き指などを持っています。外反母趾や浮き指は、足部の捻じれやゆがみから発生する足部の異常な動きが原因ですが、この異常な動きがフクラハギの筋肉を酷使させて硬くし、それが血管を圧迫するために冷えが起こるのです。詳しく説明しましょう。
1.下肢の冷えの原因
フクラハギにあるヒラメ筋、後脛骨筋、長趾屈筋、長母趾屈筋などの筋肉が硬くなると、それらの間を走行している後脛骨動脈という名前の動脈が圧迫されて、足部に行く血液の量が低下して冷え性となることがあります。このタイプの冷え性は比較的若い女性に多いようです。
とくに若い女性が好む傾向のあるハイヒールを履くと前述の筋肉が持続的に収縮するため、「冷え」のみならず、「静脈の浮き」や「むくみ」も生じます。むくみにより足首が太くなることもあります。
ハイヒールを履くと、つま先立ちの状態になりますから、フクラハギの筋肉が働き続けることになるので、そこにある筋肉がだんだん疲労してきて硬くなるのです。
またハイヒールではなくローヒールであっても、女性用のパンプスは持続的に足指を圧迫するので循環障害を起こしやすい傾向があります。外反母趾の人で冷え性を持つ人が多いのはこの理由によります。
2.下肢の冷えのメカニズム
次に「冷え性」をバイオメカニクス的に説明しましょう。
歩行においてはカカトから着地しますが、その衝撃を吸収するために、足部は内側に少し倒れて着地します。この動きを回内(プロネーション)といいます。このときに後脛骨筋という名前の筋肉が伸ばされながら収縮して回内のスピードを小さくさせます。
ところが足に捻じれやゆがみがある場合はこの回内が大きくなり過ぎます。
たとえば前半分の内側が少し上がったタイプの足を考えてみましょう。
このような足の構造は下の写真のように、足首から先をベッドから出して、うつ伏せに寝てもらうと良く分かります。
このようなタイプの足が地面に着くときには、足全体が大きく内側に倒れます。この動きを過回内(オーバープロネーション)と言います。
この過回内は外反母趾の原因にもなりますが、これが起こると後脛骨筋は通常以上に働かされ、さらに長趾屈筋、長母趾屈筋も過回内のスピードを落とすために使われます。そして酷使されたこれらの筋肉は硬くなり血管を圧迫するようになります。こうして足の冷えが起こります。
3.下肢の冷えの対策
3-1.靴選び
まずは構造的及び機能的に優れた靴を選ぶことから始めます。
ミズノ、アシックス、ニューバランスなどのウォーキングシューズをシューフィッターと相談しながら選んで下さい。ウォーキングシューズの選び方は「外反母趾の人生をバラ色にするシューズ選びの3つのポイント」を参考にしてください。
パンプスはカカトの周り(ヒールカウンター)がしっかりとしたもので、ヒールの高さが3~5センチのものを選んで下さい。パンプスの選び方は「ハイヒールのパンプスが女性に及ぼす6つの悪影響とその対策」を参考にしてください。
3-2.足底板・インソール
次に行わなければいけないことは、足の捻じれ・ゆがみからくる足の異常な動きを止めることです。そのためには足の捻じれ・ゆがみを補正するために、靴の中に足底板やインソールを入れます。足底板はオーダーメイドのもので、インソールは既製品です。
3-3.マッサージとストレッチ
次に行うことは、フクラハギの筋肉をマッサージして弛めることです。
両方の手の親指でほぐすのが一般的ですが、結構疲れるので、反対のヒザを使います。弛めたいフクラハギを反対側の膝がしらにのせ、フクラハギを上下に動かしてマッサージします。入浴したときや入浴の直後に行うと、より効果があります。
フクラハギのマッサージが終わったら、フクラハギのストレッチを行いましょう。タオルの両端をそれぞれ左右の手で握ります。そしてタオルの中央部に土踏まずの少し前(つま先側)を当て、ヒザを伸ばした状態でタオルを手前に引っ張ります。これでフクラハギの筋肉がストレッチされることになります。
4.霜焼け
霜焼けは気温が5℃前後で、昼夜の気温の差が10℃ぐらいのときに、手、指、足、足指、頬、鼻先、耳たぶなどの皮膚に血行障害をきたして起こる皮膚の病気です。霜焼けを起こしやすい体質は家系的なものであると言われています。一般的にはこどもに多い病気ですが、成人の場合には男性よりも女性がかかりやすい傾向があります。
霜焼けになるとむず痒い感じがし、手指や足指にできたときにはその部分が硬く膨れる場合もあります。また、患部を温めると痛みや痒みが強くなります。霜焼けの肌が乾燥すると皮膚の角質層に亀裂が生じ患部が赤く見えますが、これを「ひび」といいます。またひびの程度がひどいものは「あかぎれ」と呼ばれます。
先細のパンプスやハイヒールを履いていると、足指の先が持続的に圧迫されて血行不良になりますが、これも霜焼けになりやすい状態のひとつです。また距骨下関節の過回内によって「冷え」が起こすことも、「霜焼け」を助長する傾向にあります。