
未成年のスポーツ選手で、とくに怪我をしたわけでもないのに足の親指の付け根に痛みを感じるときには、母趾基節骨(きせつこつ)の疲労骨折の可能性が否定できませんので、医療機関でレントゲン写真を撮ってもらうのがいいです。
1.母趾基節骨疲労骨折とは
母趾(足の親指)にある2つの趾骨のうち、足先とは反対にある趾骨、すなわち基節骨に起こったヒビのことです。
疲労骨折になっても耐えられないような痛みを伴うことはないため、痛みを我慢して同じ動作を続けてしまうことがあります。が、そのうちに痛みがだんだん慢性化し、さらに腫れや発赤も生じるようになります。
早期にはレントゲン撮影ではこのヒビは写りにくいため、疲労骨折だとは分からないことが多いのですが、圧痛や運動時痛があって腫れや発赤が見られるときは、疲労骨折の可能性があります。母趾の基節骨以外の趾骨には疲労骨折は極めて稀です。
注)足の指には左右それぞれ14個の骨があり、これらをまとめて趾骨といいます。「趾」とは「あしゆび」とも読み、足の指のことです。足の先から順番に末節骨、中節骨、基節骨という名前がついています。母趾だけは中節骨がありませんから、「3×5-1=14」個あることになります。
2.外反母趾との関係
母趾(足の親指)の基節骨の疲労骨折は外反母趾と関係していることが多いことが分かっています。
外反母趾の状態で地面を蹴ったり、窮屈なハイヒールで歩いたりすると、母趾の基節骨の同じ部分に繰り返して外力がかかることになり、次第にヒビが生じるようになることがあります。このヒビが母趾の基節骨の疲労骨折です。
3.スポーツとの関係
バレーボール選手、サッカー選手、長距離走者、短距離走者のように走ったり、ジャンプしたりするスポーツの選手の場合、とくに怪我がないのに親指の付け根が痛む場合は疲労骨折を疑うことが必要です。
歩調を変えながら、繰り返して親指の付け根の関節を反らす動作が疲労骨折を起こしやすくします。未成年の選手に多いのも特徴の一つです。
4.治療と予防
医療機関できちんとした処置を行ってもらうことが大事です。
またその疲労骨折が治癒した後にも、外反母趾及び(または)過回内に対する処置を行なうことがが肝要です。
足に捻じれやゆがみがあると、足の裏が地面に着くときに足自体が大きく内側に倒れます。これを過回内(オーバープロネーション)と言います。
この異常な動きが外反母趾の原因なのですが、母趾の基節骨の疲労骨折を起こした人または起こす恐れのある人(外反母趾がある人)は、この過回内を防ぐことを行っておくのがよいです。
具体的には普段履く靴の構造に気をつけ、またスポーツ用の靴もそれに準じた基準で選ぶということです。靴の選び方については「外反母趾の人生をバラ色にするシューズ選びの3つのポイント」をご覧になってください。
また普段履きやスポーツシューズの中に、足の捻じれやゆがみの影響を最小限にするために、足底板やインソールを入れておくことが望まれます。足底板はオーダーメイドのもので、インソールは既製品です。