
こどもの外反母趾の割合が増加傾向にあるというデータがあります。たしかに10年前よりも当院への問い合わせも多くなっているような気がします。原因は何なのでしょうか。
また正座した時に甲に痛みを感じる人がよく来院されます。どういう理由で足の甲に痛みが出るのでしょうか。(メルマガ2016年1月9日号)
目次
1.こども外反母趾の増加
1-1.こどもの外反母趾が増加する原因
こどもの外反母趾が増加し続けていることは新聞や雑誌で幾度が報道されました。
一体何が原因なのでしょうか。
その原因はこどもの置かれた生活環境の変化が大きいと思いますが、
足の研究に秀でている兵庫教育大学名誉教授の原田碩三先生は
その具体的な内容を発表されています。
この内容は「子供の頃に足指を使わない環境だと足指が使えない状態になる」に載せさせていただいています。
もっとも原田先生は浮き趾(浮き指)の原因として
こどもの生活環境の変化を列挙してますが、
これはこどもの外反母趾の増加の原因としてもよいと私は思います。
1-2.足病学における外反母趾の原因
欧米で研究が進んでいる「足病学」では
外反母趾の根本原因は「過回内」であるとしています。
これはカカトが大きく内側に倒れることを指し、
英語では「overpronation(オーバープロネーション)」と呼ばれています。
この動きがひどくなると、外反母趾だけではなく
さまざまなトラブルをこどものからだに起こします。
内反小趾、浮き趾(浮き指)、扁平足、タコ
カカトの痛み、足の甲の痛み、ヒザの痛み、腰痛
さらには、
歩き方がおかしい、走るのが遅い、姿勢が悪い
さまざまな成長痛と呼ばれるこどもの下肢の痛み・・・・・
1-3.こどもの外反母趾対策
これらを改善するためには「過回内」を止めることがまず大事です。
そのためにはきちんとした構造のクツを履かせましょう。
ニューバランス、ミズノ、アシックスなどはお勧めです。
こどもさんの足のサイズをきちんと測ってもらい、
シューフィッターの方に相談して購入して下さい。
次にしっかりとクツ紐を締める習慣をつけさせてあげましょう。
小さいこどもさんの場合はマジックテープで留めるクツでしょうから
それをしっかりと留めさせてあげてください。
たんにこどもさんにさせるのではなく、
お父さん、お母さんが一緒にご自分のクツ紐を結ぶようにして下さい。
横にいるこどもさんはお父さん、お母さんの姿を見て、
自然にクツ紐を締めることを覚えます。
そしてクツの中に足底板やインソールを入れてあげましょう。
足底板はオーダーメイドのもので、インソールは既製品です。
足底板やインソールを入れると足の動きが正常に近づきます。
すると骨や筋肉や靭帯などが
バランスよく成長していきやすくなります。
少しでもこどもさんに異常を見つけたら
なるべく早い時期から、よい構造のクツと足底板及びインソールを使うのがいいです。
2.正座すると足の甲が痛い
2-1.正座時の足の甲の痛みの原因
正座すると足の甲が痛むという方がよくいらっしゃいます。
足の甲ではなくて、足首の前面が痛い人もいますし、
足の甲の外側に痛みが来る場合もあります。
骨折や捻挫をしたわけではありません。
これは足首を反らす筋肉が硬くなっているのが原因である場合が多く、
甲そのものに異常があることは少ないです(例外はあります)。
こういう方の中には歩いている時や走っている時にも
足の甲に痛みを感じる人がいます。
あるいはしゃがむと足の甲に痛みが出ることもあります。
またすぐにつまずきそうになったり、実際に転倒してしまったりすることもあります。
これは足首を反らす筋肉が働きにくくなっているのが原因です。
2-2.足の甲の痛みを解決するアイテム
このような症状のある人は
自分の足のサイズに合うクツで、構造的に優れたものを選ぶことが大事です。
そしてその中に足底板やインソールを入れた方がよいです。
足底板については「外反母趾の痛みを劇的に改善するクツの中敷き(インソール)」もお読みください。
2-3.筋肉に対する治療
また同時に働きにくくなっている「足首を反らす筋肉」の治療を行うべきです。
この「足首を反らす筋肉」はスネの前面や側面にあります。
反対のカカトで、硬くなったスネの筋肉をゴリゴリとマッサージするだけでも
症状が軽くなったり、症状そのものがなくなる場合もあります。
が、ふたたび同じような症状が出てくる場合も珍しくありません。
そもそもは足(足首から先)の捻じれ・ゆがみが原因で、
足が異常な動きをすることから、この症状が起こっているからです。
2-4.足底板はいつまで使うのか
この捻じれ・ゆがみを「クツ」と「足底板」で補正することが大事なのです。
– 足底板はいつ外せるのでしょうか?
こういう質問をメールで質問されたことがあります。
答えは「一生、外せません」です。
– 足底板を入れて症状がなくなっても、外したらまた症状が出るのであれば
– 治ったことにはならないんじゃないんですか?
皆さんもこのように考えるかもしれません。
– 外反母趾で親指のつけ根の内側が痛い。
– 足底板を入れたら痛みがなくなった。
– でも足底板を入れなかったらまた痛みが出てきた。
– これってなおったことにならないんじゃないか。
たしかにそういうことも言えるかもしれません。
しかし手術を除けば、これ以外に方法がないのです。
テーピングをやって痛みがなくなっても、貼らなかったらまた出てくる。
歩き方を変えても、意識しなくなったらまた痛む。
結局、足底板がいちばん手間がかからないのです。
ただクツに入れておけばよいだけですから。
もちろん症状によっては治療が必要な場合もありますが、
症状が収まれば、あとは足底板を足に合ったクツに入れて歩くだけでいいのです。
メガネやコンタクトレンズを考えてみて下さい。
これらを使うことによって近視や乱視が治る訳ではありません。
でも使うことによって日常生活が不自由なく行えます。
足底板も同じように考えていただいたらいいと思います。
足の甲の痛みに関しては「足の甲の痛みは脛(スネ)の筋肉に問題があることが最も多い」で詳しく述べています。