
クラシックバレエを行っている人は少なくはありません。最近では大人になってから始める人もいるようです。
そのバレエの練習で足の甲に痛みを出す人はよくいるようです。ところがその痛みの原因が分からないため、いつまでたっても痛みとサヨナラできない人がいるのは残念なことです。専門家でもよく分からない足の甲の痛みの原因とその対処法をここで学んでください。(メルマガ2016年2月13日号)
目次
1.バレエで足の甲が痛くなる原因
バレエの動きは非常に下肢の筋肉を使います。
とくにカカトを上げたり下げたりする筋肉には大きな負担をかけます。
筋肉が使われ過ぎるとその筋肉が疲労して痛みを出すことがあります。
これらの疲労した筋肉のうち、足首を反らす筋肉は、
正座の状態のときのように伸ばされて痛みを出すこともありますが、
逆に縮められたときに強い痛みを出すことが多いです。
縮められたときというのはプリエを行うときです。
そしてドゥミ・プリエよりもグラン・プリエの方が痛みは強いです。
グラン・プリエの方が足首を大きく反らしますから、
スネの筋肉が大きく縮められるのです。
痛みはスネにくることもありますが、
足の甲から親指の背面に走ることもあります。
では、この痛みを取り除くにはどうしたらよいのでしょうか。
2.足の甲の痛みの治療法と予防法
2-1.筋肉のマッサージ
この痛みを取り除くにはまずはスネの筋肉をほぐします。
手を使うとすぐに疲れますので、痛みが出ている下肢とは反対のカカトを使います。
イスに腰をかけて、カカトを痛みが出ているスネに当てて
ゴリゴリとマッサージします。
あまり無理はしないでくださいね。
2-2.筋肉のストレッチ
マッサージが終わったらストレッチを行いましょう。
ストレッチは正座をすればよいです。

スネのストレッチ(正座)
正座ができなければ
足首から先を足裏の方向に、手を使って伸ばして下さい。
お風呂の中で行なったり、お風呂から出た後で行うと効果的です。

スネのストレッチ
2-3.足の甲の痛みを起こしやすい骨格
ここでひとつ考えていただきたいのは
バレエをやっている人がみんな、この症状を起こす訳ではないということです。
痛みが出ない方もたくさんいらっしゃいます。
どういう人がなるのでしょうか。
じつは痛い状態になる人には、足の動きに特徴がある人が多いのです。
それはカカトが内側に倒れやすいという特徴です。
カカトが内側に倒れやすいと
スネやフクラハギの筋肉に負担がかかりやすいのです。
カカトが倒れやすいのは足の骨格に問題があることが多いです。
足にゆがみや捻じれがあるのです。
そしてこれは生まれつき、つまり遺伝的なものが大きいのです。

足の変形が過回内(オーバープロネーション)を起こす。(Pod Mech vol.2. 株式会社インパクトトレーディング, 2006, p9)
2-4.足底板の使用
カカトが内側に倒れないようにするには
普段からクツの中に足底板を入れておくのがよいです。

体重をかけずに作る足底板
足底板で足のゆがみや捻じれを補正して、
カカトが内側に倒れないようにするのです。
カカトが内側に倒れることを
専門用語で「過回内」、英語では「オーバープロネーション」と呼ぶのですが、
過回内は足のゆがみや捻じれによって起こり、
これが色々なトラブルの原因になるのです。
バレエでは「ローリング」と呼ばれているようです。
外反母趾、内反小趾、足底腱膜炎、浮き指、ハンマートゥ、
巻き爪、タコ、ヒザの痛み、腰痛、姿勢の悪さ・・・
など様々なマイナス要素をもたらします。
足の甲に痛みが出る方はすでに外反母趾などの症状を
すでにお持ちになっているかもしれません。
もしそうならばすぐに足底板を使った方が良いでしょう。
そしてそれと同時に専門家に診てもらうのも良いかもしれません。
2-5.靴の選択
また足底板を入れるときに、よいクツを選ぶことも重要です。
私はいつもニューバランス、ミズノ、アシックスのクツを
信頼のできるシューフィッターに選んでもらって下さいと患者様にお伝えしています。
優れた構造のクツに、優れた足底板を入れ、
その上で専門的な知識を持った施術家に施術をしてもらうのが
痛みから解放される最短距離なのです。
もちろんバレエをしているときには
構造的に優れたクツも、足底板も使っているわけではありません。
しかし足の変形は年をとるほどひどくなっていくのです。
ですから日ごろから過回内が起こらないように注意しておくことが大事なのです。
靴の選び方については「外反母趾の人生をバラ色にするシューズ選びの3つのポイント」で詳しく説明しています。
3.ひ弱になる日本人の足
このメルマガが配信されるのは2月13日ですが、
この時期は1年のうちでも最も寒い時期です。
毎年、この寒い時期になるとある民族のことが思いだされます。
15年ほど前に読んだ近藤四郎先生の本に書かれてあったと思います。
南アメリカ最南端にフエゴ諸島という島があります。
現在はチリとアルゼンチンが分割統治していますが、
ここに住んでいたセルクナム族(オナ続)という民族のことです。
我々日本人と同じ黄色人種で、南米最後の先住民族のひとつだったようです。
残念ながら19世紀末に絶滅したようですが、
この民族は裸足で生活していたのです。
ここの気候はというと1年間のうち、5か月は雪が降っています。
そんな環境のなかで裸足で生活していたんですよ。
考えられませんよね。
このメルマガを書いている私はというと
エアコンとファンヒーターに挟まれて、
分厚いクツ下に、ニューバランスのウォーキングシューズを履いています。
またセルクナム族は毛皮を着てはいるが、下着はつけていなかったそうです。
一方、私は上下ともに何枚も着ています。
現代人がいかに身体を甘やかしているかが分かりますよね。
そういえば近藤先生の本の名前は
たしか「ひ弱になる日本人の足」だったと思います。
ひ弱になっているのは足だけじゃないんですけどね。