
外反母趾対策と言われているものにはたくさんのものがあります。
テーピング、5本指ソックス・ストッキング、サポーター、外反母趾用シューズ、歩き方を変える努力、グーパー運動、つま先運動、インソール、足底板など。
ではどれが最も確実で安価な外反母趾対策なのでしょうか。ここでしっかりと考えることは「確実」であり、かつ「安価」であるかということです。いくら確実であったとしても高ければ手が出ないでしょうし、いくら安くても効果がなければ意味がありません。(メルマガ2016年5月7日号)
目次
1.「外反母趾対策」とはどういう意味か
ここでは手術は除外し、手術以外の保存療法について述べます。
「外反母趾対策」といっても意味はいくつかあります。
- 親指の付け根の内側の痛みがなくなる。
- 親指の変形の進行が止まる。
- 親指の変形が矯正される。
「1」→「3」ほど難易度が上がります。「1」が成功しなければ「2」は成功しないし、「2」が成功しなければ「3」は成功しません。
2.外反母趾の原因は何か
これが分からなければ正しい外反母趾対策の選択はできません。外反母趾の原因については下記のリンク先で詳しく述べました。
「あなたの信じている外反母趾の原因は全く根拠のないウソかも」(外反母趾の3大原因)
「悲しいけれども遺伝は外反母趾の原因の中でも最大のものだ!」(遺伝)
「ハイヒールが外反母趾の原因であることを男性が証明していた」(ハイヒール)
「外反母趾が女性に多い本当の理由は筋肉の弱さではなかった!」(女性)
「足病学で説明されている、外反母趾発生の真のメカニズムとは」(足病学)
遺伝、女性、ハイヒールが現代医学でいう「外反母趾の3大原因」であり、また足病学では足の捻じれやゆがみから来る過回内(オーバープロネーション)が外反母趾の原因であるとされています。
現代医学で言う3大原因のうち、ハイヒールは後天的な外反母趾の原因ですが、遺伝と女性は先天的なものです。足病学でいう足の捻じれやゆがみが親から遺伝されると考えると、現代医学と足病学がつながります。そして「女性」は遺伝的な要素を強めると考えればいいです。
3.外反母趾発生のメカニズム
親から足の捻じれやゆがみが遺伝されますが、その捻じれやゆがみの中で、前半分の内側が上がっている構造の足を例に挙げて外反母趾発生のメカニズムを説明します。

足の前半分の内側が少しだけ上がっている足(Pod Mech vol.2. 株式会社インパクトトレーディング, 2006, p8)
このタイプの足が地面に着くときには、足全体が内側に大きく倒れます。

足の変形が過回内(オーバープロネーション)を起こす。(Pod Mech vol.2. 株式会社インパクトトレーディング, 2006, p9)
すると第1中足骨は④~⑥の3つの方向に大きく動かされます。

過回内カカトが倒れるとその動きは足先の方に伝わる。
このとき親指の骨(基節骨)はしっかりと地面に着いているので、第1中足骨が⑥(青色の矢印)の方向に動かされると、親指の付け根の関節で亜脱臼が生じます。これが外反母趾の始まりなのです。

外反母趾発生時の骨の動き1
4.外反母趾対策の種類
外反母趾の対策としては下記のようなものが考えられます。まだ他にもいくつかあることでしょう。
- 足指を広げるテーピング
- 足の捻じれを補正するテーピング
- 5本指ソックス・ストッキング
- サポーター
- 外反母趾用シューズ
- 歩き方を変える努力
- グーパー運動
- つま先運動
- インソール
- 足底板
すべてを実行しても悪くはないのですが、なかなか続けることは難しいと思います。
ここで考えなければいけないことは
- より根本的な対策は何か。
- 長く続けられるものは何か。
ということです。
5.足底板やインソール以外の対策
5-1.足の捻じれを補正するテーピング
これはテーピングの中でも優れた方法で、下記のリンク先に「距骨下関節の過回内を防止するテーピング」として動画で説明していますが、自分では巻けませんし、長期間に貼るとなると困難です。スポーツを行うときのみに使うのが賢明です。 ⇒ 外反母趾のテーピングは悪い歩き方をこれだけ変えてしまう!
5-2.足指を広げるテーピング
自分で貼ることはできますが、長期間続けるのは難しいし、足の捻じれを補正できないという欠点があります。
⇒ もし外反母趾のテーピングを続けるのならばこの方法がベスト
5-3.5本指ソックス・ストッキングやサポーター
これは長期間続けるのには適していますが、足の捻じれを補正できないという欠点があります。
5-4.外反母趾用シューズ
これは親指の付け根が靴に当たらないように、足先の部分を広げたタイプのものが多いですが、これも足の捻じれを補正できないという欠点があります。
5-5.歩き方を変える努力
お金を使わずに実行できますが、足の捻じれを補正できないという欠点があります。そもそも歩き方は足の構造によってほぼ決まるので、意識して歩いたからといって、外反母趾になる方向に骨が動かないわけではありません。努力しても外反母趾の方向に骨は動きます。
5-6.グーパー運動やつま先運動
外反母趾がこれらの運動で改善することはあります。実際に有名な女性アナウンサーがつま先運動で外反母趾を完治させたことがテレビで放映されました。しかしこのアナウンサーは数年後のブログで外反母趾の痛みを訴えています。ということは一度は完治したと思っても再び外反母趾になるということです。

つま先運動
でもそれは外反母趾発生のメカニズムを考えれば当然のことです。原因である足の捻じれがまったく変わっていないので、ふたたび外反母趾になったわけです。最初に外反母趾が完治したと思ったときに足底板を入れると、よい状態を維持できたのにと残念に思います。
6.安価な外反母趾対策
「5.足底板やインソール以外の対策」ではいくつかの外反母趾対策を説明しましたが、安価な外反母趾対策というのはどれも根本的な足の捻じれの影響を防ぎ続けるのには十分ではないのです。
やはりインソールや足底板を靴に入れる他に、長期間にわたって足の捻じれの影響を防ぐ方法はないのです。
足底板は日本を除く先進国では一般的に使用されているのですが、なぜか我が国ではあまり知られていません。
この足底板が足の骨格の捻じれを補正してくれるのです。
メガネやコンタクトレンズのようなものだと思えばよいです。
この足底板をきちんとした構造のクツに入れておけば、あとは努力をする必要はほとんどありません。
これが「最も確実な外反母趾対策」です。

足底板
足底板を使った上で、テーピングや運動やグッズを使うのは良いことですが、
足底板抜きでそれらを使っても「確実な外反母趾対策」とはならないのです。
では「安価」は実現できないのか、ということになります。
まあ人によって「安い」という感覚が違いますから、
いくらが安いというのは難しいのですが、
ものには相場というものがありますから、
それを考えると1万円~2万円の足底板というのはそんなに高くはありません。
これが高いと思う方はまずは「5.足底板やインソール以外の対策」に書かれたことを
実行してみたらいいと思います。
7.足底板はどれだけの費用がかかるのか
では足底板を使うとどれだけの金額がかかるのでしょうか。
もう少し見ていきたいと思います。
まずしっかりとした構造の靴が必要です。
当院ではアシックスやニューバランスのウォーキングシューズをお勧めしていますが、
だいたい12000円以上のものだとよいと思います。

ニューバランスのランニングシューズのひとつ
足底板はどのくらいの金額でしょうか。
これは色々なものがあり、10000~15000円くらいのものから
高いものだと50000~60000円するものもあります。

足底板(オーダーメイド)
高ければよいとは言えませんが、
安いもので良いものはあまり見たことがありません。
良いものはそれなりの金額になっているのです。
結局、靴と足底板で22000~27000円以上することになります。
これって高いのでしょうか。
当院にいらっしゃる患者さまの場合、
これまで外反母趾対策を目的に
何十万円も靴に費やしてきた人がたくさんいらっしゃいます。
それでも駄目だったから当院にいらっしゃった訳です。
また治療に通うのに交通費や治療費に
多額の金額を払った方も多いです。
それを考えると靴と足底板で
27000円というのはそんなに高いものではないとも言えます。
そして努力がいらないことも利点です。
一生懸命テーピングを貼ったり、運動を続ける必要がない。
テーピングも貼り続けると費用は馬鹿になりませんし、
いったん改善しても再び痛みや変形が出てきますので、
その都度テーピング代が必要となるのです。
足底板の場合はただ足底板を入れたクツを履いておくだけで、
外反母趾対策になるのですから、とても楽なのです。
足底板をお使いになったことのない方は
ぜひ一度お使いになってみて下さい。
次回はもう少し外反母趾対策について述べたいと思います。