
近年、実業団に所属するランナー以外に、趣味で駅伝やマラソンを楽しむ、いわゆる市民ランナーが増えてきました。実業団に所属している場合は経験豊富なトレーナー等に指導してもらえるのですが、市民ランナーの場合はそのような環境にないため、身体のトラブルも少なくありません。そのトラブルの中でもランナー膝と呼ばれるものは比較的多いものの一つです。今回はそんなランナー膝の患者様の症例を挙げてみました。(メルマガ2016年8月20日号)
ランナー膝[症例9]
1.腸脛靱帯炎ではなかったランナー膝
25歳の社会人ランナーの男性の方がいらっしゃいました。
昨年(2015年)の神戸マラソンにも出場したということです。
最近、右太ももの外側から右ヒザの外側の部分が
走っている途中で痛くなるということです。
痛みは5キロ付近で出ます。
痛くなるという部分を私が実際に触ってみても、あまり痛みは出ません。
その代わりに、股関節の前面の外側の筋肉を押すと、
走っている時に出る痛みに似た痛みが出ます。
この筋肉は「大腿筋膜張筋」という長い名前の筋肉です。
骨盤から始まって、腸脛靭帯に移り、ヒザの外側にくっついています。
この筋肉を酷使すると、この筋肉にトリガーポイントが形成され、
太ももの外側、さらにはヒザの外側に痛みが発生します(下記リンク先参照)。
トリガーポントとは「痛みを出す点」と考えておいてください。
痛みの出る範囲は個人差があり、上記の図に書かれた場所よりも
もっと下の方まで痛みが出る人も多いです。
ランナー膝というと腸脛靱帯炎と思われがちですが、そうではない場合もあります。
2.大腿筋膜張筋のトリガーポイント対策
対策は2つです。
1つはこの筋肉そのものに対するもので、
この筋肉をほぐした後に、ストレッチを行ないます。
痛い部分そのものをマッサージしてもあまり効果がありません。
原因であるこの筋肉自体をマッサージ&ストレッチしなければ意味がありません。
またこの筋肉を鍛えるのはNGです。
なぜならばこの筋肉は酷使されて疲労しているのです。
鍛えるとますます酷使することになります。
マッサージ以上に効果のあるのは、鍼治療です。
トリガーポイントのできている部分に鍼をすると
痛みが取れやすくなります。
そのあとでストレッチを行います。
この方の場合は3回ほどの鍼治療を行ないました。
また同時に、ご自宅ではマッサージとストレッチを実行していただきました。
3.過回内の防止
もう一つは足(足首から先)の動きに対する対策です。
足にねじれやゆがみがあると足の動きに異常が出ます。
特に足の前半分が上がっていると、足全体が大きく内側に倒れやすくなります。
足が大きく内側に倒れることを
過回内またはオーバープロネーションと言います。
この状態が続くと「大腿筋膜張筋」に負担がかかりやすくなります。
そしてトリガーポイントが形成されるようになりますから、
この異常な動きを真っ先に防がなければなりません。
そのためにはよい構造の靴に矯正インソール(足底板)を入れます。
この方の場合はミズノ製のしっかりとしたランイングシューズをお持ちでしたので、
その中に米国製の矯正インソールを入れました。
足病医の薦める矯正インソールだけあって
足をコントロールする機能に非常に優れています。
この矯正インソールは体重をかけずに作らなければいけません。
体重をかけると足がつぶれてしまい、
正確な矯正インソールができなくなる場合が多いからです。
この方は矯正インソールと当院での施術によって、痛みなく走ることができるようになりました。