
自分の足よりも大きいサイズの靴を履いたり、スリッパを履いたりすることを習慣とすると、足の指が浮いた状態、すなわち浮き指(浮き趾)になることがあります。ところがそのメカニズムを詳しく説明したサイトがないので、ここで説明したいと思います。そしてその浮き指を改善させる方法も解説しました。
1.浮き指の第4の原因
これまで浮き指の原因として次の3つを挙げてきました。
- カカトの内側への倒れからくる浮き指
- ハイアーチからくる浮き指
- 靴の圧迫からくる浮き指
「1」は「足が内側に倒れ過ぎて浮き指になるメカニズムを詳しく説明」で、
「2」と「3」は「高過ぎる足のアーチが原因で浮き指になる場合のメカニズム」で詳しく解説しています。
そして今回、浮き指の第4の原因として「スリッパや大きめの靴を日常的に履くこと」を挙げ、その浮き指の発生メカニズムを解説します。
2.第4の浮き指の発生メカニズム
スリッパや大きめの靴を履くとどうなるかというと、足首を反らして靴やスリッパをひっかけて歩くようになります。
そのときに足首を反らすのは、前脛骨筋という名前の筋肉です。この筋肉はスネから起こって足部(足首から先のこと)の骨に付いています。
リンク先にこの筋肉の図と痛みが出やすい場所が書かれています。ただし浮き指になっているからと言って、痛みが出るとは限りません。むしろ痛みが出る人は少ないです。
履物をひっかけて歩く習慣が続くと、この筋肉が疲労してきます。またこの筋肉は足裏が地面に着くときに、いきなりバタンと着かないように、ブレーキをかけながら足裏を着地させる作用を持ちます。
履物をひっかけた状態であると、この着地のときにもこの筋肉が過剰に使われるため、疲労しやすいのです。すると別の筋肉がこの弱った前脛骨筋を助けるようになります。
その別の筋肉というのは、足の第2~5指を反らす長指伸筋と足の第1指(母指)を反らす長母指伸筋です。リンク先にはこの2つの筋肉と、それぞれの筋肉から起こる痛みの場所が同時に描かれています。
前脛骨筋が弱るとこの2つの筋肉が足首を反らしたり、着地のときの減速に使われます。もちろん正常な場合にもこの2つの筋肉はこれらの作用を持っているのですが、前脛骨筋が弱ると使われ過ぎるのです。なお前脛骨筋の場合と同様に、浮き指になっているからと言って痛みが出るとは限りません。
もしカカトが内側に倒れやすかったり、ハイアーチだったりすると、履物をひっかけて歩くとなおさら浮き指になるリスクが高まります。
3.第4の浮き指の治療法
3-1.筋肉のマッサージ
まずはこれらの3つの筋肉のマッサージを行い、硬くなった筋肉を緩めます。両手の親指を使ってもみほぐしてください。入浴後に行うとなお効果的です。弱っているからと言って、これらの筋肉を鍛えてはいけません。一層固くなってしまいます。また足の裏の筋肉をグーパー運動で鍛えるのも無意味です。
手でマッサージするのが大変でしたら、反対の足のカカトを目的の筋肉のあるスネに当て、ゴリゴリと上下に動かします。
3-2.ストレッチ
マッサージが終わったら、筋肉のストレッチを行います。足首を反対のフトモモの上に乗せ、一方の手で足部(足首から先)を手前に引き、他方の手でフクラハギを反対側に押します。
正座ができる人は正座そのものがこれらの筋肉のストレッチになりますので、しっかりと行ってください。
4.履物について
足のサイズに合わない大きな靴やスリッパを履くのを止めることは重要ですが、多くの方がカカトが内側に倒れやすかったり、ハイアーチの傾向を持っているので、よりよい履物を選択することが重要になります。
4-1.靴選び
まずは自分の足のサイズに合う靴で、構造的に優れたものを選んでください。できればしばらくはウォーキングシューズが良いと思います。シューフィッターの方のアドバイスを受けながら選ぶのが良いでしょう。
靴の選び方に関しては
「外反母趾の人生をバラ色にするシューズ選びの3つのポイント」に詳しく述べていますのでお読みください。
パンプスを履くことが避けられない方は
「ハイヒールのパンプスが女性に及ぼす6つの悪影響とその対策」の中に書かれている「7.ハイヒールの選び方」を参考にしてください。ただしハイヒールよりも、ヒール高が3~5センチのパンプスにしておいた方が改善されやすいです。
4-2.足底板
良い構造の靴を選んでも、それだけでは足の異常な動きを止めることができません。カカトが内側に倒れやすかったり、ハイアーチの傾向のある人は足の動きを正常に近づけるために、自分の足に合った足底板を作成してもらって、それを靴の中に入れてください。
パンプスの場合はパンプス用のインソールが良いでしょう。既製品でも良いものがあります。
4-3.特殊なサンダル
日本の住宅事情では自宅の中では靴が履けませんので、米国の足病医が開発した特殊なサンダルを履くことをお勧めします。
上記の写真のサンダルが購入できない場合には、家の中ではスリッパを止めて、鼻緒の付いたものを購入して履いてください。そのときに鼻緒が緩いとまたひっかけて歩くことになりますので、鼻緒が少しきついものにしてください。