浮き指に対する2つの大きな勘違いを理論的に説明してみた

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • LINEで送る

この記事は 8で読めます。

浮き指に関しては二つの大きな誤解があります。その二つは
1)浮き指の原因は足裏の筋肉の弱りである。
2)浮き指の人の親指は反りすぎる。
ということです。
足の施術の専門家ですら間違っているのですから、一般の方が誤解するのも無理はありません。
ここではこの二つの誤解を説明したいと思います。

1.「浮き指の原因は足裏の筋肉の弱りである」は誤解

ひとつめの誤解は浮き指が足を曲げる筋肉の弱りが原因で起こると思われていることです。
そしてこれを改善するためには、足の指を曲げる筋肉を強化することがベストだと言われています。

たしかに浮き指の人は、そうではない人に比べて足の指の握力が低下しているとの報告もあるようです。
しかし、握力が低下しているからといって、足の指を曲げる個々の筋肉が弱っているとは必ずしも言えません。

そう言いますと、「筋肉が弱っているから、握力が低下するのではないのか」という声も聞こえて来そうです。が、そうとも言えないのです。

たとえば本来、関節を曲げる働きをする筋肉が、逆に関節を伸ばす働きをするように変わってしまったら、筋肉は弱っていなくても、握力は低下してしまいます。

私は浮き指の人の足の握力が低下する根本的な原因のひとつは、このように筋肉の作用が変わってしまうことにあるのではないかと考えています。

具体的なことは下記の二つの投稿で述べたいと思います。
足が内側に倒れ過ぎて浮き指になるメカニズムを詳しく説明
高過ぎる足のアーチが原因で浮き指になる場合のメカニズム

また浮き指は「ハンマートゥ」や「クロウトゥ」や「マレットトゥ」などの足指の変形と密接な関係があります。
浮き指を持つ多くの人たちが、同時にこの足指の変形を持つからです。

足指の変形

足指の変形(Pod Mech vol. 2. 株式会社インパクトトレーディング, 2006, p25)

2.「浮き指の人の親指は反りすぎる」は誤解(1)

ふたつめの誤解は浮き指の人は親指を足の甲側に反らしたときに反りすぎるということです。
これは体重をかけたときと、体重をかけないときの2つに分けて考えなければいけません。

2-1.親指の反る角度と浮き指か否かは関係があるのか

まずは体重をかけないときのことを考えてみましょう。
まずは動画をご覧ください。

この動画から、親指の反る角度と浮き指か否かが関係ないことを理解していただけたと思います。

親指が反るか反らないかは身体の柔軟性とかかわりがあります。
関節が柔らかい人は親指を反らしたときに90度以上曲がることも多いです。

だからと言ってこの人が浮き指とは限りません。
「曲がる・反る」という動きと「曲がっている・反っている」という状態は違うのです。

たとえばここに二人の女性がいるとします。
ひとりは80才の腰の曲がったおばあちゃんで、もうひとりは20才の女子体操選手です。

一目瞭然、おばあちゃんは少し前かがみで、体操選手は背筋が伸びています。
ふたりに両足を伸ばして床に座ってもらいます。
そして両手を伸ばして上半身を前に曲げてもらいます。

どちらが前に曲がりやすいと思いますか。
立ったときに前かがみだったおばあちゃんですか。

違いますよね。

つまり立っている時に前に曲がっている状態だからと言って、
前によく曲がるという訳ではないのです。
状態と動きを混同してはいけません。

2-2.浮き指で親指が反りにくくなるメカニズム

浮き指の人の中には、正常な人よりもはるかに親指が反りにくい人がいます。
これは親指の付け根の関節が変形性関節症を起こしているのです。
どういうメカニズムでこういう状態になるのかを説明しましょう。

下図は前足部(足の前半分)が後足部(足の後ろ半分)に対して内側に反っている足が
地面に着いたときの状態ですが、カカトが大きく内側に倒れていることが分かります。

過回内

足の変形が過回内(オーバープロネーション)を起こす。(Pod Mech vol.2. 株式会社インパクトトレーディング, 2006, p9)

カカトが大きく内側に倒れると、第1列だいいちれつ(第1中足骨ちゅうそっこつ内側楔状骨ないそくけつじょうこつ)の3方向の動きが大きくなってしますのです。つまり
.正常な場合と比べて、先端が後端よりも相対的にさらに上がってしまう(つまり後端が先端よりも相対的にさらに下がってしまう)。
.正常な場合と比べて、床側の面がさらに内側を向く。
.正常な場合と比べて、第2中足骨からさらに離れる方向(内側)に動く。
第1中足骨と内側楔状骨ないそくけつじょうこつはいっしょに動くので、まとめて第1列と呼ばれています。

過回内と骨の異常な動き

カカトが倒れるとその動きは足先の方に伝わる。

 

このような異常な動きが起こると第1列(第1中足骨+内側楔状骨)が挙上されてしまい、下図のように親指の関節で2つの骨が衝突するようになります。

第1列の運動

第1列の運動
Pod Mech vol.2. 株式会社インパクトトレーディング, 2006, p19

骨同士が衝突するようになると、その部分が変形を起こし、だんだん動きにくくなります。
このような状態が続くと強剛母指きょうごうぼし(あるいは強直母指きょうちょくぼし)と言われるような状態になります。
これはカカトが倒れて外反母趾になる過程と似ています。

その足が外反母趾になるのか、それとも強剛母指になるのかは第2中足骨の状態に左右されますが、詳しいことは「親指の付け根が反らなくなり、蹴るときに痛みが出る強剛母趾の治し方」で改めて説明します。

この親指のつけ根の関節が反りにくくなると、ひとつ先の関節(指節間関節しせつかんかんせつ)がその代わりに反るようになり、結果として親指が浮き指の状態になってしまうことがあります。

制限母趾

親指の関節が反って、浮き指の状態になっている足

 

親指の浮き指

親指の付け根の関節が反りにくくなり、代わって親指の中の関節が反るようになる場合がある。

もうひとつ付け加えるならば、「筋力が強い・弱い」ということと、
「関節が硬い・柔らかい」ということはあまり関係がないです。
筋肉が発達している人でも身体の関節が柔らかい人もいれば、筋肉が弱くて関節が硬い人もたくさんいます。

3、「浮き指の人の親指は反りすぎる」は誤解(2)

次に体重をかけたときのことを考えてみます。

母趾MP関節の検査

体重をかけた状態で親指を持ち上げる検査

まっすぐに立っている人の足の親指を、指で持ち上げるという検査を行ってみます。
このとき正常な人の場合は親指が上がりますが、浮き指の人は親指が上がりにくいという結果になります。

理由を説明しましょう。
まず上で挙げた図を右に回転させ、足の裏が水平になるようにします。
そして床を示す赤線を引くと下図のようになります。

制限母趾の説明

Pod Mech vol.2. 株式会社インパクトトレーディング, 2006, p19(一部改変)

手の人差し指で立っている人の親指を持ちあげようとすると、
正常な場合は親指が上がりやすいのですが、
浮き指や外反母趾の場合は骨と骨が衝突するので上がりにくくなるのです。

すでに変形を起こしている人だけではなく、
まだ変形を起こしていない人の場合でも反りにくいという結果になります。

以上のように浮き指に関しては大きな誤解があります。
これらは足病学を学べば容易に分かることなのですが、
残念ながらこの学問は日本ではまだ一般的に知られていません。

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • LINEで送る

SNSでもご購読できます。

コメントを残す

*

CAPTCHA